拝啓､猫神様｡ 拾弍

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人間(ひと)として､愛し愛される人間になりたかった｡
倖せになりたかった｡

なのに､こんな自分にしかなれなかった事が｡


｢……さびしいんですか？じゃあ｣

｢……っ！｣

｢抜け出しましょう､一緒に｣


ぐいっ！と腕を掴まれ立たされた｡そしてそのまま迷いなく彼は歩き出す｡


｢ちょ､ちょっと……っ｣

｢あ､俺は本田勝也と言います｡よろしく｣









第一印象は
“変な教師”だった｡


｢ねぇ……大丈夫なの？｣

｢何がですか？｣

｢教師のクセにこんな……色々ヤバいんじゃないの？｣


されるがままにラーメン屋に連れてこられて言うのもアレだが……と今日子は隣に座る勝也に言うも､本人はしれっと笑う｡


｢大丈夫ですよ｡俺､やる気のないただの教育実習生ですから｣

(え？教師じゃないの？)


物腰が柔らかいのか､ただ慇懃無礼(いんぎんぶれい)なだけなのかよく分からなくて｡
初めて会った生徒を連れ出して､平気な顔して食事に誘う｡

やり方がメチャクチャな奴だったそうだ｡


｢なんで……あたしに構うの……？｣

｢さて……何故だと思いますか？｣

｢……興味本位？｣


小さな声でそう言った今日子に勝也は静かに笑うと､そっと今日子の前髪に触れてひょいっと避ける｡


｢そうですね｡興味があります｡

眉無し……さん？｣

｢……っ｣


その日､確かに分かったことは､ラーメンが美味しかった事だけ｡


｢き､気安く触んないでっ！｣

｢はい､すみません｣




傷にしみて痛かったけど､一緒に食べたラーメンはとても美味かったと､目を細めて笑った｡




これが､世界で一番大切な人との､出会いだったと｡








第89話
｢俺は､そうだよ｣



……To be continued

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