2 ページ8
｢リンの事は､俺がしっかりしなきゃいけない事だと思うから､由希がそんなに気に病まなくていいよ｡
由希だって､しっかりやんなきゃいけない事､他にあるだろ｡例えば生徒会とか､新しいことやるのも､ホントに良い事じゃないかなって俺は思う｣
｢そうか……？そうなのか……？そんな事で､いいのか……？“自分”の事を最優先して……っ｣
もっと先に最優先するべきものがあるんじゃないのか？
“春が頼んだんだよ｡あそこから出してやってくれって｡”
“由希を助けてくれって”
自分一人の力で､今立ち上がれている訳じゃないのに｡
何も返せていないままで､自分の事を選ぶのか｡
｢……なんで……迷うの……？
……由希は､弱いね｡
……由希は､優しいね｣
｢…………っ｣
｢迷うなよ｡やってみなよ｡由希がホントに望む場所を､見つけてきなよ｣
｢………………甘いなぁ｡春は……俺に…………｣
｢……もしかして､前世で生き別れた姉妹なのかも……｣
｢は？姉妹……？
……っはは｡なん……だよそれ……っあはは……っ｣
｢……そういう由希だから､理解ってもらえる
これからも｣
幼かったあの日､初めて会った､あの日｡
自分をちゃんと見てくれた由希のように｡
由希にもきっと､由希を“由希”として見てくれる誰かが現れる｡
｢頑張れ｣
｢…………っ｣
立ち上がれないんだ｡
自分一人の力では､進めないんだ｡先へ｡
自分一人の､力では｡
＊＊＊＊＊＊＊＊
｢………………｣
その頃､学校を出た夾は､車行き交う大通りを歩いていた｡
しかし､その場で足を止め何か考えるように俯く｡
やがて顔を上げた夾は､帰り道とは別の方向へと歩き出した｡
｢ああ……わざわざ見舞いに来てくれたのかい？｣
A達が祖父の元へ訪れると､床に伏せていたが､嬉しそうに笑って出迎えてくれた｡
｢嬉しいねぇ……｡ありがとう｡
三者面談の方は大丈夫だったのかい？｣
｢はい……っ！大丈夫です……っ｣
｢おじいちゃん……具合はどう？｣
｢大丈夫だよ｡腰以外は元気なもんだ｡眠ってばかりで溶けそうだよ｣
｢ふふ……っ｣
｢……久しぶりに､勝也と今日子さんの夢を見たよ｣
｢……？｣
｢懐かしかったねぇ……｡勝也とワシは､昔仲が良くはなくってなぁ……｡今日子さんが橋渡しになってくれたようなもんだよ｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 129人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「原作沿い」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：言ノ葉 | 作成日時：2020年10月21日 14時
