2 ページ45
頼みの綱である夾に断られ､為す術が無くなった中､同じ班であるもう一人の男子が恐る恐る声をかけた｡
｢な､ならば俺が……っ｡ゆ､由希ぃー……？朝だよー……起きてー……？｣
｢…………｣
｢お！起きた｣
ぼー……っとした表情は相変わらずだが､ようやく立ち上がった由希に､男子達がほっとしたのも束の間､ふらふらー……と覚束無い足取りで目の前の襖に激突し､そのままなんと寄りかかって再び寝ようとしていた｡
｢わー！！未だかつて見たコト無いドジな由希だー！！｣
｢由希ィ！怪我して傷残ったらどうすんの！！｣
｢顔は！？顔は無事！？｣
まさに阿鼻叫喚｡そんな中､翔が呑気に挨拶しながら部屋に入ってきた｡
｢おはにょろー｡
｢ナベー！！｣
｢副会長ォォォ！！由希が目ェ覚まさへんねーん！！危ないことすんねーん！！｣
｢えー？なんでんなコトでそこまでパニックに陥ってんのー？｣
大袈裟なーと言いながら､翔は壁におでこを預けたまま器用に寝ている由希を下から覗き込むように見る｡
｢ゆんゆーん？寝てんのー？もしもーし｣
しかし､一向に起きる気配が無い｡これには流石の翔も困ったらしく､ため息をつきながらやれやれと肩をすくめる｡
｢しょうがねぇなーゆんゆん｡
“お嬢さん”育ちなんだろうなぁ……｣
｢…………！｣
この翔の一言で一気に覚醒した由希は､すぐ様翔の耳をぎゅむーーーーっと引っ張る｡
｢いったぁぁぁ！！！痛い痛い！！ごめん違った！！
“お坊ちゃん！！”お坊ちゃんだった！！｣
｢どっちにしろ馬鹿にしてるだろ…… ｣
｢｢｢｢おおー！！｣｣｣｣
｢由希の目覚めだー！！｣
｢ナベ偉い！！｣
｢ナベ最高！！｣
｢さっさと飯食いに来いよお前ら……｣
なかなか来ない男子達を呼びにきた男性教師が青筋を浮かべていたので､ひと騒ぎもそこそこに由希達一同はようやく全員で食堂へ向かったのだった｡
＊＊＊＊＊＊＊
｢はーん｡それで朝メシ来んの遅れたんかー｡ホレ､こっち向けー｣
ありさがのんびりとカメラを構えると､透､A､由希は鹿に餌を上げつつ目線を寄越した｡
｢ナイスショット｡で？その後副会長はどうしたん？｣
｢ん？なんか“せっかく起こしてやったのに！！”とか“もう声かけんなバーカバーカ！！”とかギャーギャー言ってたけど……｣
｢ガキか……｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 129人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「原作沿い」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：言ノ葉 | 作成日時：2020年10月21日 14時
