第７７話｢あります｡きっと｣ ページ44
修学旅行の醍醐味と言えば､普段は日中学校でしか会えない友達とのお泊まり｡
つまり､夜も一緒にいられるという事｡
学校の外という開放感と､夜という絶対的シチュエーション……｡
生徒達がワクワクするのも仕方ないというもので……｡
｢先生方集まってください！！女子が男子の部屋にいたんです！！｣
……とまぁ､こういう事も起きるわけである｡
白木と別クラスの担任がせっせと布団を敷いている中､慌てた様子で入ってきたもう一人の担任｡
しかし白木達は｢はぁ……｣と言葉を漏らすだけ｡
｢“はぁ”じゃないですよ白木先生！貴女のクラスの生徒も大勢いるんですよ！？｣
｢まぁホラ……お約束ってやつですし｣
｢そうよねぇ｡大人としては､そんな事に付き合わせんなって感じですしー｡眠たいしー｣
｢大人である前に教師でしょうが！！いいから来いや！！｣
怒り気味の担任教師にへいへいと付き合う形で白木達は部屋を出る｡
｢行きますよ行きますゥ｣
｢全く……！どの生徒も浮き足立って恥ずかしい……っ！！
修学旅行は異性の部屋に忍び込むために来るものではありません！｣
｢…………？｣
白木は通りがかった部屋の襖が開けっ放しな事に気づき､部屋の様子を覗く｡
するとそこには､なんとも気持ちよさそうに既に就寝するA達の姿があった｡
(さっさと寝入ってんのもどうかと思うが……｡色気ねぇなおい……)
ちなみに男子の部屋では､多くの生徒達が抜け出す中､同じように既に就寝している由希と夾の姿があった……｡
そんなこんな(？)あり､翌朝｡
今日も空は快晴｡絶好の修学旅行日和である｡が｡
｢……どうしよっか……｣
｢うーん……｡どうしよう……？｣
とある男子の部屋では､目の前に繰り広げられた光景に困惑する一同の姿があった｡
｢完っ璧に目ェ覚ましてないよね……由希……｣
昨晩､この部屋の誰よりも先に就寝したはずの由希は､起き上がったはいいもののかれこれ随分の間ぼけー……っと一点を見つめていた｡
いつも学校では文武両道､冷静沈着な所しか見ていない男子達は､この滅多に見れない由希の寝坊助っぷりに困惑しているようだ｡
｢でももうすぐ朝メシだべよー｣
｢きょんー｡起こしてやってよぉー｣
｢なんで俺なんだよ……｡ほっとけそんなん｡俺は先行く｣
一方こちらは誰よりも先に就寝し､誰よりも先に起床した夾｡由希には目もくれず足早に部屋を出ていってしまった｡
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 129人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「原作沿い」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：言ノ葉 | 作成日時：2020年10月21日 14時
