拝啓､猫神様｡拾 (ページ4)

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俯いて話していた潑春が顔を上げ､前方から来る人物を見て､小さく声を上げた｡
それに反応して由希も前を向くと､向かいから歩いてくる真知も由希達に気付いた｡

｢倉伎さん……今度の生徒会よろしく｣

｢……はい｣

真知は由希に返事をしてぺこりと頭を下げると､そのまま歩いていった｡

｢……会計……だっけ？同じクラス｣

｢え！？そうだったの！？｣

以前潑春が暴れた時に行ったくらいで､一年の教室にはあまり行くことがないから､クラスのことなどあまり気にしていなかったが､真知と同じだったとは……｡

｢……生徒会､どう？｣

｢どうって……未知数｣

｢……それは､いいことだよ｡由希にとって｣

｢…………｣

｢ユキー！！ハルー！！遅いのよー！！｣

｢あ､うん……｣

＊＊＊＊＊＊＊

その日の放課後､由希は久しぶりに草摩の自宅へと訪れた｡
表札や大きな門構えを目にすると､足が竦むのを感じた｡それでも､由希はグッと拳を強く握って足を踏み出した｡

｢……まあっ｡お帰りなさい由希さん……っ｣

｢お帰りなさい｡ご連絡頂ければ奥さまもお出かけにならなかったでしょうに……｡
お帰りは夜になられるそうで｣

出迎えた手伝いの者にそう言われ､由希は小さく息を吐く｡
結構気合い入れて来たというのに｡相変わらず家にいないらしい｡
由希はカバンから三者面談の知らせが書かれた紙を出すと手伝いの者に渡した｡

｢また俺から連絡入れるけど､渡しておいて｣

｢あら……お待ちになってくださらないのですか？｣

｢…………慊人は？｣

｢ご当主もお出かけになられたようで……｡ここ最近は体調もよろしいようで｣

そう話すお手伝いの声を聞きながら､由希はとある部屋に目を向ける｡
そこは､まだ紫呉の家に住むことになるずっと前､自分が常に外をぼーっと眺めていた部屋だった｡

そして結局､母親にも慊人にも会うことは出来ず､空振りの状態で由希は家を出た｡
するとたまたま通りかかったのか､楽羅がパタパタと駆け寄ってきた｡

｢ゆんちゃん！？うわ……っ｡どうしたの珍しい……っ！｣

｢楽羅……短大(がっこう)帰り？｣

｢ううん｡今日はサボリっ！ちょっとお散歩してたの！｣

｢丁度良かった｡聞いていい？｣

｢ん？なぁに？｣

｢リンは楽羅の家に暮らしてるんだよね｣

｢うん｣

｢待ってたら会えるかな｣

由希の問いに楽羅はんー……と首を傾げる｡

｢どうかなぁ……｡あの子､帰ってこない日も多いんだ｡学校も行ってない時もあるみたいだし……｡謎なのよね｣