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｢頼りになる人だよ｡兄さんは｣
由希の言葉に､母親と綾女は思わず由希を見る｡
｢そりゃぁ……めちゃくちゃなトコロも多いけど……碌でもなくなんか……無いよ……｣
｢…………っ｣
｢やめろ……っ｡
はとりに報告するのだけはやめろ……っ！！なんだそのいい笑みは……っ｣
感極まり､すー……っとポケットから携帯を出す綾女の手を､由希はすかさず掴んだ｡
｢案ずるな！メールに
｢同じことだよ！！｣
いつものようなやり取りをする由希達だったが､母親にとっては信じられない光景に映ったようで､震える声で問いかけた｡
｢いつの間に……あなた達……そんな……｣
｢おやおやっ！そんなにも愛燃ゆる兄弟に映っているかい！？｣
喧嘩売られてるのかと､母親が綾女の言葉に青筋を立てた時､綾女は母親を真っ直ぐに見る｡
｢由希はね､やり直すチャンスをくれたんだよ｡
貴女に対しても､無だったモノが有に転じ始めているんだよ｡
……わからないかい？今の貴女は､まるで昔のボクみたいだ｡
どれほど大切なものを踏み荒らし生きてきたか気づかずにいる｣
｢……なっ！なんで私がそんな事言われなくっちゃ……親に向かって！！
こんな侮辱ってないわ……っ！！人の苦労も知らないで……っ｡
こんな事なら､あなた達なんて産まなければ良かった！！｣
｢…………っ｣
バシンっ！と母親は音を立てて進路指導室を出ていった｡白木は立ち上がったが､それを綾女が制す｡
｢放って起きたまえ｡ブチ切れたあの人に言葉が通じるとは思えないからね｣
｢いや……ブチ切らせたのはこっち……｣
｢………………｣
“頑張ってください”
“頑張れ､由希君”
由希は背中を押してくれたA達を思い出し､スっと席を立つ｡
｢俺……行ってくる……っ｣
｢おやおや｡大丈夫かい？｣
｢……兄さん｡今日は……ありがとう｡
来てくれて……｣
背中越しにそう言って､由希は母親を追いかけて部屋を出ていく｡
由希の足音が遠ざかると､綾女はスっと携帯を取りだしメールを打ち出した｡
その様子を､白木は呆れながら見る
｢聞いてくれたまえとりさん……っ｣
｢まーた……怒られるよ？大体､ホントに来るとは思わなんだ｡予定変更したのに｣
｢ぐれさんから聞いたのさっ！｣
｢あ"ーもう……あの男は……｣
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作者名：言ノ葉 | 作成日時：2020年10月21日 14時
