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「……でも心配してたよ、本田さん。会ったのは妹の方だけど、きっと姉の方も」
そう潑春が言うと、由希は目を丸くして潑春を見る。
「……やっぱ気付いてなかった?」
「……うん」
「気持ちを吐露するもしないも、由希の勝手だ。けど、安心はさせてやってもいいんじゃない。
少なくとも、本田さん達は」
「……俺は、お前が心配だよ。そんな……人の事ばかりかまけて」
「なんだろ……性分かな。
でも、辛くなるよりかは楽しくなってほしいし」
「…………そうだね……」
「本田さん」
「あ、由希君!先程生徒会の方々が探してらっしゃいましたよ!」
屋上へと続く階段で透を呼び止めた由希は、笑顔で話す透にゆっくりと階段を登って距離を詰める。
「本田さん、俺……前よりネクタイを結ぶ早さがマシになってきたんだ。ボタンも付けられるようになったし、野菜を枯らす回数も減ってきたし。
……他人とも前より会話をしてる……と思う。
でも、まだまだだね。本田さん達に心配させちゃって……ごめん」
「え!?あ、いえそれは!私が勝手に……!」
「まだまだカッコ悪い俺だけど……まだ本田さん達に言えないこと……あるけど……でも……少しずつ……」
「……はい」
由希は優しく微笑む透を見て、自分も笑みが溢れるのを感じた。
それはまるで。まるで昔自分が求めていた暖かいもの。
「……そう言えば、本田さん一人なの?」
「はい!Aちゃんは図書室にいらっしゃいますよ?新しい本が入ったそうで、気になるので見てくるそうです!」
「そっか……」
*******
由希が図書室の扉を開けると、放課後のこの時間は誰もいないようで静けさが増していた。
しかし微かに聞こえるページを捲る音に、由希はゆっくりと近づいて行く。
入口からは見えない、奥の窓際の席が見えるようになると、小さな背中がちょこんと見えた。
夕焼けが照らすその背中は、華奢だと言われる自分から見ても本当に細くて。
(いつも、その小さな体で色んなことを受け止めて……)
あの日も。「あの姿」の夾に立ち向かっていく事が、どれだけの勇気が必要だったか。
そうして君は、いつだって。
「本田さん」
「あ、由希く……」
誰かの救いになってくれるんだ。
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言ノ葉(プロフ) - ゆえさん» コメントありがとうございます!これからもワクワクした気持ちで読んでいただけるように精進致します!作品は今拾弐まで続いておりますので、引き続き読んでいただけると嬉しいです! (2020年12月27日 21時) (レス) id: ebcac45cbc (このIDを非表示/違反報告)
ゆえ(プロフ) - 大好きなお話に巡りあえてわくわくした気持ちで読み進めています、とある少女の話での第三者からみた二人の姿がとても良くて感動しました。 (2020年12月27日 17時) (レス) id: 8e1c7d7280 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:言ノ葉 | 作成日時:2020年8月19日 12時