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微笑んでそう言うAに、藉真が目を見開く。
「……師匠!」
「!」
「……夾く」
Aが夾の名前を呼ぼうとしたその時、ヒュッと風を切る音が真横から聞こえた。
慌てて目で追うと、夾は藉真に技をしかけていた。
「……っなんで……っ黙ってかえんだよ……っ。
まるで、逃げてくみてぇに……っ!!」
「夾く……」
「っ!」
夾が技をしかけていく度かわしていく藉真だったが、受け流すように払った腕が夾の顔を払う。
「……!夾……」
それでも夾は藉真に技をしかけ続ける。
「俺がっ、俺が怒るとでも思ったかよ……っ!
……俺に……呆れたかよ。
……ごめん、世話ばっかやかせて……。
世話かけて、ガキみたいに甘えて、「道場に帰る」とか、そんな……師匠を逃げ場所みたいにして……ごめん。
でも!俺はこんなだけど……まだこんなだけど、でもいつか、いつかはちゃんと一人で立って歩いてけるような奴に……なるよ。
傷付けたり、重荷になったりしないで、師匠が……と……」
夾は俯いて、戸惑うように口篭る。
それでも、ゆっくりと顔を上げて、まっすぐに藉真を見据えた。
「……師匠が……っ!俺の親父なんだって言えるような……っ!!」
胸を張って、そう言えるような。
「そんな奴に、俺は……なる!!」
バシッ!!と藉真が夾の突きを手のひらで受け止める。
藉真は夾の拳を優しく包む。
あんなに小さかったのに、いつからか大きく強くなった。思わず笑みがこぼれる。
……長く、遠回りをして、ようやく
触れ合う事ができたかもしれないね。
それはきっと。
ドンッと重い衝撃を受けたと思ったら、夾の体はいとも簡単に吹っ飛ぶ。
一瞬の出来事に、Aは思わず口を開けて固まった。
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言ノ葉(プロフ) - ゆえさん» コメントありがとうございます!これからもワクワクした気持ちで読んでいただけるように精進致します!作品は今拾弐まで続いておりますので、引き続き読んでいただけると嬉しいです! (2020年12月27日 21時) (レス) id: ebcac45cbc (このIDを非表示/違反報告)
ゆえ(プロフ) - 大好きなお話に巡りあえてわくわくした気持ちで読み進めています、とある少女の話での第三者からみた二人の姿がとても良くて感動しました。 (2020年12月27日 17時) (レス) id: 8e1c7d7280 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:言ノ葉 | 作成日時:2020年8月19日 12時