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｢……また雨降りそうだね｣
｢はい……｣
Aはトントンと机の上を整理しながら窓の外を見る｡
今夜は灰色の雲で覆われ､星が見えない｡
(……なんだろう)
Aはそっと胸を抑える｡何かが､何かが起きそうなザワザワとした感覚｡
｢……Aちゃん？｣
｢っ！｣
｢大丈夫ですか？具合でも……｣
｢ううん｡大丈夫｣
不安げにこちらを見る透を安心させるように､Aは小さく微笑んだ｡
それを見て､透も微笑みを返す｡
｢Aちゃん､本当によく笑うようになりましたね！｣
｢え？｣
｢このお家に来てから､以前よりもAちゃんが笑ってくれるようになって……この間うおちゃん達とも話していたのです！｣
｢そ､そうかな……｣
｢はい！私も､とても嬉しいです……｡きっと､草摩の皆さんと出会えたから､ですね｣
｢…………｣
Aの手を握ってそう話す透に､Aは恥ずかしそうに俯く｡
そして視界にちらりと目に入る､大切そうに箱に入れられた一枚の封筒｡
幼い頃に書いた､初めての手紙｡
いつか､夾にも話せる日が来るだろうか｡
｢あ､そうだ｣
｢？｣
｢師匠さんが､今夜お時間頂けますかって｣
｢今夜……｡つまり今ということでは？｣
｢あ｣
＊＊＊＊＊＊＊＊
｢師匠……さぁ……｡話なんか別に外でなくてもいいだろ？こういう日はダメだって知ってるくせに｣
家の外で夾はダルそうにそう話す｡
気圧の変化のせいで姿勢もいつもより猫背になる｡
｢私の祖父もそうだった｡雨の日は体調をよく崩していたそうだ｡
猫憑き故か､｢本来の姿｣の物の怪が雨を嫌う故か｣
｢本来の姿｣という言葉に､ポケットに突っ込んだ手がぴくりと動く｡その時左手の数珠も小さく音を立てた｡
｢……そろそろ｢本来の姿｣の事もきちんと受け止めなくては､前に進めぬよ｣
｢……っ受け止めてるよ｡俺の人生は､その猫憑きとして生まれた時点で終わってる代物なんだってね｡それが
｢……変わっていないね｣
あいつのせいだ!!あいつが悪いんだ!!
あいつを殺して俺も死んでやる｡
そうすりゃまんぞくなんだろ｡
おれも死ねばおまえもまんぞくなんだろ!!
そう､実の父親に激昴してから｡
｢……お前は､これからもそうして生きていくのか｡
耳を塞ぎ､目を閉じ｣
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言ノ葉(プロフ) - ゆえさん» コメントありがとうございます！これからもワクワクした気持ちで読んでいただけるように精進致します！作品は今拾弐まで続いておりますので､引き続き読んでいただけると嬉しいです！ (2020年12月27日 21時) (
レス) id: ebcac45cbc (このIDを非表示/違反報告)
ゆえ(プロフ) - 大好きなお話に巡りあえてわくわくした気持ちで読み進めています、とある少女の話での第三者からみた二人の姿がとても良くて感動しました。 (2020年12月27日 17時) (レス) id: 8e1c7d7280 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：言ノ葉 | 作成日時：2020年8月19日 12時
