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34話「それでも、賭けてみたい」 ページ26

「お元気そうで何よりです。藉真殿」

「紫呉君も、仕事が順調とのことで喜ばしいです」

「あはは。ボチボチですよ」


紫呉と向かい合って談笑する人物を、透はじっと見つめる。
とても物静かで、穏やかな空気をまとった人だ。


「師範……っ。改めまして、お久しぶりです……!」

「ああ……久しぶりですね、楽羅」

「お久しぶりです……。師範」

「……背も伸びて、ひと回り大きくなりましたね、由希」


由希や楽羅とも親しげに話す姿に、透は首を傾げる。紫呉だけでなく、二人とも知り合い……?


「透君。
この方は草摩藉真(そうまかずま)殿。
夾君の師匠であると同時に、由希や楽羅、はー君達にも武術を教えた先生なんだよ」

「あ……っそ、そうだったのですか……っ!」

「透さん……とお呼びしてもよろしいですか?」

「はっ、はい!本田透です!!」


静かに問いかけた声に、透は思わず居住まいを正す。
今まで出会ったことの無い人柄で、どこか緊張してしまう。


「……あの、先程お見かけした時はもう御一方いらしたと思うのですが……」

「あ、はい!Aちゃんなら今……」

「失礼します」



透が藉真を居間へと通している間、お茶を入れていたAはそっと入ってきて藉真の方へと湯のみを置く。
周りよりも距離を置いて座っていた夾は、そんなAをじっと見つめた。


「ありがとうございます」

「いえ。あの、初めまして。本田Aです」

「……草摩藉真です。
……そうですか、あなたが」


藉真の脳裏には、彼女の隣で不器用ながらも笑う夾の姿。
藉真の慈しむような視線に、Aは不思議そうに首を傾げた。
しかしその様子を見ていた夾だけはどこか不安げな顔をしている。


「……お二人のお噂は予々。十二支の事もご存知だそうで……」

「「は、はい……」」

「…………そうですか」

「夾君っ、そんな端っこにいないで挨拶したらどうだい?君も去年の山篭り以来なんでしょう?
再会出来て嬉しくないのかい?」


紫呉の言葉に夾は「違う」と声を上げようとするも、その場にいた由希を気にして口を閉ざす。
そしてそのまま無言で居間を出ていってしまった。


「夾君……?」

「……夾の自室はどちらですか?」

「あ、えっと……二階の一番右端です……。
今ご案内を……」

「いえ、それだけ分かれば結構ですよ」


そう言うと、藉真も夾の後を追うように居間を後にする。
A達は心配そうに見ていたが、楽羅と紫呉は可笑しそうに笑った。


「らしいねぇ」

「ホント」

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設定タグ:フルーツバスケット , 草摩夾 , 原作沿い   
作品ジャンル:アニメ
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言ノ葉(プロフ) - ゆえさん» コメントありがとうございます!これからもワクワクした気持ちで読んでいただけるように精進致します!作品は今拾弐まで続いておりますので、引き続き読んでいただけると嬉しいです! (2020年12月27日 21時) (レス) id: ebcac45cbc (このIDを非表示/違反報告)
ゆえ(プロフ) - 大好きなお話に巡りあえてわくわくした気持ちで読み進めています、とある少女の話での第三者からみた二人の姿がとても良くて感動しました。 (2020年12月27日 17時) (レス) id: 8e1c7d7280 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:言ノ葉 | 作成日時:2020年8月19日 12時

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