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夾が食器を持って階段を降りてくると、怒り心頭な由希の声が耳に入ってきた。
「それが、荒らし放題なんだ!せっかく本田さん達と植えたニラが!一体誰があんな乱暴な事を!ニラを憎んでるとしか思えない仕業だ!」
由希の愚痴を聞いていた紫呉は、由希の後ろで気まずそうな顔をする夾に意味あり気な笑みを浮かべる。
それに夾はイラッとしたものの、ここで怒っては元も子もないので、スタスタと台所へ向かった。
しかし夾の気配に気づいていた由希は彼を見ることなく言い放つ。
「だれもお前だなんて思ってないから安心しろよ」
スパンと障子を閉めたと同時に紫呉は抑えきれずに吹き出して声を出して笑った。
それを見た由希はきょとんとする。
「……紫呉?」
「あのね、犯人は究極的に言って……透君!」
「え?」
「しかし、透君は帰宅途中に熱で倒れて、ずっと寝込んでいます。そこでクイズ!どうやって由希君の畑のニラを取る事が出来たでしょうか!」
「……熱?」
由希は立ち上がって透の様子を見に行こうとした所、夾に呼び止められる。
「今、ようやく食い終わって眠ったとこだ。起こすなよ」
「………………」
透は熱→風邪の時はお粥→恐らく夾が作る→風邪にはニラがよく効く(らしい)→夾はニラが死ぬほど嫌い。
以上、由希の脳内方程式である。
「……で?何を食べさせたの」
「あー……ニラ粥」
やはりお前か。
綺麗な右ストレートを食らった夾は、やり返そうと殴り掛かり、由希も冷静にそれに応戦しようと駆け出すも。
「やるなら静かにねー?」
という紫呉の声にキキィッと急ブレーキがかかったように動きが止まる。
「うるさくすると透君が起きちゃうよ?」
それを言われたら動けるわけが無い。
と、二人はそのまま石のように固まった。
すると玄関が開いて、紫呉に呼ばれたはとりが入ってきて、その光景に不思議そうに眉をひそめる。
「やぁ、いらっしゃい」
「遅くなって悪かった」
「あの……お姉ちゃん、具合が悪いって、聞いて……」
「泣きそうにしていたから、一緒に連れてきた」
ひょこ……っと心配そうに顔を覗かせたのは杞紗。
紫呉は安心させるように目線を合わせて微笑む。
「お見舞い、きっと喜ぶよ」
「紫呉さん……っ!」
「しーちゃん!!」
「お姉ちゃん……っ」
バイトを急いで終わらせてきたAと紅葉が息を切らせて入ってくると、杞紗は嬉しそうに笑ってAの制服の裾をきゅっと握る。
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言ノ葉(プロフ) - ゆえさん» コメントありがとうございます!これからもワクワクした気持ちで読んでいただけるように精進致します!作品は今拾弐まで続いておりますので、引き続き読んでいただけると嬉しいです! (2020年12月27日 21時) (レス) id: ebcac45cbc (このIDを非表示/違反報告)
ゆえ(プロフ) - 大好きなお話に巡りあえてわくわくした気持ちで読み進めています、とある少女の話での第三者からみた二人の姿がとても良くて感動しました。 (2020年12月27日 17時) (レス) id: 8e1c7d7280 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:言ノ葉 | 作成日時:2020年8月19日 12時