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それほど苦手な食べ物なのに､自分のために我慢して作ってくれたと気付いて､透は嬉しくてたまらなくなった｡
食べてしまうのが､なんだか勿体ない｡
｢本当に美味しそうです……！｣
｢あーもう！いいから！食えよさっさと｣
｢はい！いただきます……！｣
宝物に触れるようにそっとスプーンを入れて一口｡
もぐもぐと噛み締める透は､風邪をひいてるとは思えないくらい幸せそうだ｡
｢……おいしいです……っ！｣
｢……食ったら皿は廊下に出しとけよ｣
スっと立ち上がった夾に､透は慌てて声をかける｡
｢あ､あの……っ｡あの……すみません､色々……｣
｢……そう思うなら､風邪なんてひくんじゃねぇよ｣
｢…………はい……っ｣
｢…………っな……っ泣くしよぉ……｣
じわぁっと透の目じりに涙が浮かんだのを見て､夾はがくっとしゃがみこむ｡
｢……すっ､すみませ……っ｣
｢……んだよ｡言えよ､弱音｡聞いてやっから……｣
｢お……っお母さんと､Aちゃんとの約束……守りたいです……っ｡なのに……赤点とって……っ情けないです……っ｡
Aちゃんは……いつだって私のために我慢してくれて……今日だって……っ私の事たくさん心配してくれて……っ｡
由希君にも申し訳ないです……｡私はもっと……しっかりした人間になりたいです……っ｣
｢…………終わりか？｣
｢……終わり……です｣
｢赤点なんざ､追試でいくらでも挽回出来るじゃねぇか！クソ由希なんざどうだっていいんだよ！死ぬまでコキ使ってやれ！ってか死ね！くたばれ！｣
｢え！？｣
｢……お前､そんな風邪ひいて悪いと思ってんなら､パッと治して､いつものヘラヘラ顔で､家ん中ウロウロしてろや｣
｢ヘラヘラ……？｣
夾達の前ではそんな間抜けな顔なのだろうか……と透は苦笑する｡
｢でないと……なんか……調子狂う｡それに……｣
｢それに……？｣
｢……あいつも､落ち着かねぇだろうし……｣
どこか顔を赤くしてそう言う夾に､透はすぐにAの事だと気付く｡
｢……お前らが､いつもの調子でウロウロ出来るようになんなら……飯くらい､作ってやっから……｡
だから……そんないちいち心配すんなよ……｣
(これは……)
｢おら！食えよ早く！熱下がりゃしねぇぞ！｣
｢は､はい……！……っおいしいです！｣
｢……美味かねぇよ､そんなん｡お前らが作るやつよか……全然｣
(もしかして……励ましてくれているのですか……？
……嬉しい……っ)
｢……しっかりしたお前なんか､薄気味悪ぃや……｣
嬉しいです……｡夾君……｡
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言ノ葉(プロフ) - ゆえさん» コメントありがとうございます！これからもワクワクした気持ちで読んでいただけるように精進致します！作品は今拾弐まで続いておりますので､引き続き読んでいただけると嬉しいです！ (2020年12月27日 21時) (
レス) id: ebcac45cbc (このIDを非表示/違反報告)
ゆえ(プロフ) - 大好きなお話に巡りあえてわくわくした気持ちで読み進めています、とある少女の話での第三者からみた二人の姿がとても良くて感動しました。 (2020年12月27日 17時) (レス) id: 8e1c7d7280 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：言ノ葉 | 作成日時：2020年8月19日 12時
