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「透。今日はゆっくり休んで」
「そうしなさいそうしなさい。透君は今日はオフ。大人しく寝るに限りますよ?」
「で、でも…………」
「と・お・る・くん?いい子だから従いなさい」
ちょんっと紫呉に鼻をつつかれ、透はようやく「はい……」と返事をした。
「ん。いい子!」
「Aちゃん……ごめんなさい……」
「謝らないで。私なら大丈夫だから、ね?透は寝る寝る」
そう言って透の手を引いて部屋へと向かうAの後ろ姿を、夾はじっと見ていた。
「今日、私もバイト休むから……」
「そんな……!私なら大丈夫です!Aちゃんは、気にせずバイト行ってきてください……!」
「でも……」
「紅葉君も、きっと待ってらっしゃいますよ……!私の分まで、お話してきてください」
ね?と赤い顔で笑う透に、Aは渋々頷くしか無かった。
とりあえず今日はなるべく早く帰ると伝えて、Aはそっと部屋を後にする。
そこへ夾も二階へ上がってきたのだが、Aは気付かずにドアノブを握ったまま何か考え込むように動かない。
「………………」
「……あ、夾君」
夾の視線にようやく気付いたAは、ぺこりと頭を下げる。
「私バイト行ってくるね」
「……おう」
「あの、透の事……夾君に頼んでも、いいかな……。も、もちろん紫呉さんにもお願いしておくので……あの……」
「……わぁったから、早く行け」
気遣うような声色にAが顔を上げると、夾はじっとこちらを見ている。
まるで、Aのことも気にかけているような眼差しで。
「ありがとう、夾君」
言葉にはせずとも、伝わってくる優しさが嬉しくて、Aは静かに頭を下げたのだった。
******
「えー!トール風邪なの!?大丈夫なの!?ちゃんと寝てるの!?」
いつものようにビルでA達を待っていた紅葉は、Aから透の事を聞くと、心配そうに声を上げる。
「うん。とりあえず今ゆっくり休んでると思うから、大丈夫だよ。だから、今日透はバイトお休み……」
「うん!わかった!まっかせといて!!」
「え?」
バビュン!と紅葉は驚く速さでどこかへ向かうと、どこから借りてきたのかAと同じ清掃員の格好で戻ってきた。サイズはぶかぶかだけれど……。
「ボクがトールの分まで、お掃除頑張るの!!」
「え?で、でも……」
「だからこの子はどこの子なの……?でもまぁいいわ可愛いし……」
「どーでもいいわ可愛いから……」
(いいんだ……)
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言ノ葉(プロフ) - ゆえさん» コメントありがとうございます!これからもワクワクした気持ちで読んでいただけるように精進致します!作品は今拾弐まで続いておりますので、引き続き読んでいただけると嬉しいです! (2020年12月27日 21時) (レス) id: ebcac45cbc (このIDを非表示/違反報告)
ゆえ(プロフ) - 大好きなお話に巡りあえてわくわくした気持ちで読み進めています、とある少女の話での第三者からみた二人の姿がとても良くて感動しました。 (2020年12月27日 17時) (レス) id: 8e1c7d7280 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:言ノ葉 | 作成日時:2020年8月19日 12時