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｢温泉ってどこの？」
｢ホラっ､ソーマで経営しとるトコあるでしょ？」
｢ああ…あそこ…」
｢お､温泉など……そのような高価な地へ､私達がお母さんを差しおいて……｡許される事なのでしょうか……｣
｢あのさ透君､温泉なんだからさ｡パリ行こうとか言ってるんじゃないんだからさ｡ねぇ？Aちゃ……｣
｢温泉……｡旅行なんてお母さんともせずにいたのに……そんな贅沢を……｣
｢………………｣
つくづく似てるなぁ､この双子……｡と紫呉は遠い目で予想外の反応を見せる彼女達を見る｡
｢断る方が勿体ないって｡この機会に家事やバイトの疲れをとっておいでよ」
｢そーだよ！
………それとも､嬉しくない?」
不安そうな顔を見せる紅葉に､A達はフルフルと首を横に振った｡
嬉しくないなんて､とんでもない｡こんな素敵なプレゼント､自分達には勿体なさすぎて……｡
｢嬉しいです……っ！倖せです……！｣
｢ありがとう､紅葉君……｣
二人の笑顔を見て､紅葉もぱあっと顔を輝かせる｡そして高らかにこう言った｡
｢ユキとキョーも一緒だよ！！｣
｢なにをあっさり勝手な事ぬかしてやがるガキ！！｣
｢ええー！いこーよいこーよォ！」
｢ざっけんな｡俺が行くと思うほうが間違ってんだよ！！｣
｢ユキは？ユキもイヤ？」
｢行くよ｡折角だし」
｢ユキはいくって！！」
｢だったら余計行かねぇっつーの！！」
一向に行く気が無い夾に､紅葉が駄々を捏ねていると､紫呉が思い出したように｢あ｣と声をもらす｡
｢そーだごめん｡全然話変わるけど今思い出した｡Aちゃん達､先月の修学旅行の積み立て金がまだなんだって？」
｢｢え！？｣｣
｢担任から連絡受けたおじいさんが電話よこしたよ｡｢なんなら払っとくよ〜｣って」
｢いけませんだめですそのような……っ！」
｢先月はその､色々と……｡でも今月のバイト代で払いきれますから大丈夫です｡担任の先生にもお伝えしましたし……｡
すいません｡ご迷惑おかけしてしまって………｣
それを聞いた由希と夾は､今日白木に呼び出されていたA達を思い出し､納得がいったようだった。
((ああ…担任に呼ばれたあれはその事を…))
｢でもAちゃんも透君もちゃんとバイトしてるのに､どうして……」
その時､紅葉を除いた男性陣が一つの可能性を思い出す｡先月は二月｡そう……二月と言えば……｡
バレンタインの……チョコ……代……？
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作者名：言ノ葉 | 作者ホームページ：https://twitter.com/KotohaJNWEST?s=09
作成日時：2020年7月17日 13時
