拝啓､猫神様｡参 (ページ22)

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｢あーあー｡もうみていられませんわ｡イチャつくなら他所でやっておくんなまし」

｢紫呉てめぇ､他人事だと思って…っ」

｢そうだ！じゃあこうしない？」

｢由希君､お茶どうぞ｣

｢熱いから気をつけてね｣

｢うん､ありがとう」

｢ゆんちゃんと透君も混ぜて､Ｗデートにするの！」

｢｢え？｣｣

突然話を振られた二人は湯呑みを手渡して受け取りの状態でこちらを見る｡

｢おお！それはいいね！｣

｢楽しそうですね｣

｢だよね！？そう思うよね！？｣

｢ちょ､ちょっと待って！｣

｢おいっ!なんで俺がクソ由希と……！｣

｢デート……｣

｢あ？｣

｢透凄いね｡デートなんて､私本でしか見たことない｣

｢はい！私もデートなど初めてです……！｣

｢夾君､お土産話たくさん聞かせてね｣

キラキラとした目でこちらを見てくるAに､夾は文句なんぞ言えるはずもなく……｡

｢……もう､勝手にしろ……｣

こんな純粋無垢な瞳に勝てるやつがいたら出てきて欲しいいや無理だろ……と結局夾が折れる形でWデートが決まったのであった｡

帰り際､楽羅は夾の手を握って嬉しそうに笑う｡

｢じゃあ明日ね！楽しみだね……！」

｢全然っ」

｢…あのね､春ちゃん言ってたよ｡夾くんとゆんちゃん仲良くなったって｡
お互いをもっとよく知りあえば､もっと仲良くなれるかもって｡そうなったら…私も嬉しいな」

そう言って､楽羅は帰っていった｡
しかし､夾はそのまま立ち尽くしてしまう｡
そんな夾に玄関に座った紫呉が揶揄うように語りかける｡

｢はーくんもいい事言うじゃないですか｡人はまず､譲歩しあう事を覚えるべきだよねぇ」

｢……何が言いたいんだよ…｡てめぇまで俺らを“仲良し”扱いしてんじゃねぇだろうな」

居間で湯のみの片付けをしていたAは､夾の怒鳴り声が聞こえ､思わず手を止める｡

｢夾君……？｣

そして玄関の方をちらりと覗き込むと､俯いた夾が苦しそうに声を荒らげる｡

｢“もっと知りあえたら”？ふざけんな！！それでなくとも､近くにいすぎてうざったいんだよ！
俺は由希が嫌いなんだよ！！

嫌いなままでいいんだよ！！」

｢何故､嫌うことが義務のような言い方をするのかな｡

まるで
知る事自体に怯えてるような目で」

｢…………っ！｣

｢夾君っ｡夾君待って｣

走り去った夾を､Aは玄関に座る紫呉の横を通り追いかける｡

｢……何？何事？」

｢いや､なに｡ちょっとばかし歯痒かったので｡
……突っつきすぎたかな」