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「冬ちゃんの忘れ物届けてくれたんですね。すみません、今冬ちゃんお風呂入ってて」
「いえいえ。お構いなく」
(え。何この状況!Aちゃんが真冬の家のキッチンでコーヒー沸かしてるよ……)
内心未だにパニックな春樹の横で、梶は冷静にAの後ろ姿を見つつボソリと呟く。
「いいなぁ。エプロン」
「お前はなんでそう変に冷静なの……」
「どうぞ」
トレーにコーヒーを乗せて戻ってきたAは、2人に差し出すと、そのまま正面に座る。
「伝え忘れててすみません。実は私、冬ちゃんの家にお世話になってて……」
「えっと……理由聞いてもいいかな」
「はい」
Aは上ノ山に伝えた時の同じように、自分の両親のことを伝えた。
二人とも目を丸くして驚いてはいたものの、話し終わる頃には「そうか」と頷いていた。
「そんなことがあったんだね」
「悪かったな……。思い出させて」
「いいんです。私もすっかりここの生活に慣れましたから」
元々、幼なじみにしては距離が近い2人だなと思っていた。
幼なじみと言うよりは、まるで家族のような、それ以上の強い絆がこの2人にはあるような気がしていた。
「ふふ」
「ん?どうしたの?」
「いいえ。ただ、お二人の反応がりっちゃんと同じだったからつい」
「上ノ山も知ってんのか」
「はい。ライブの次の日にお見舞いに来てくれて、その時に」
(上ノ山の反応が目に浮かぶ)
(上、強く生きろ……)
ここにいない上ノ山の心情を察して、2人は心の中で合掌した。
でも、同い年の高校生の男女がひとつ屋根の下って、普通なら過ちの一つや二つくらい起きそうなものだが、それが全く想像つかないのはこの2人の雰囲気ゆえなのか……?
「……春樹さん、梶さん?」
「よっ。真冬」
「お邪魔してます」
そこに、風呂から上がった真冬がリビングに入ってきた。
目を丸くして驚く真冬に、Aは理由を説明する。
「冬ちゃんの忘れ物、届けに来てくれたんだって」
「忘れ物?」
「そうそう。真冬、スタジオに楽譜忘れてったよ?明日昼休み練習するなら困るでしょ?」
「ありがとうございます」
「あ、待って冬ちゃん」
机の上に置いてある楽譜に真冬が手を伸ばそうとすると、Aが真冬の頭に乗っかっただけのバスタオルでごしごしと真冬の頭を拭いた。
「ちゃんと拭いて?楽譜濡れちゃうし、最近涼しくなってきたんだからまた風邪引くよ?」
「うん」
一生懸命手を伸ばしながら拭くAと、当たり前のように受け入れる真冬。
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に - 最近ギヴンにハマった20代ですが、こちらの小説ほんっっっとうに最高です!!!!夢主の行動・気持ち・考えなど文からとても伝わってきて読みやすいです。お忙しいと思いますが、完結に向けて頑張ってください。楽しみにしております!! (2020年4月30日 13時) (レス) id: e8737ae1a9 (このIDを非表示/違反報告)
美咲 - アニメ終わって落ち込んでたら、映画っ!嬉しすぎて……2020年まで頑張っていけそうです!言ノ葉さん最終話までお疲れ様でした!番外?リクエストも更新、楽しみにしてます!に (2019年9月20日 15時) (レス) id: 7ef2d991dc (このIDを非表示/違反報告)
蓮華 - はじめまして!梶さんと春樹とのお話を書いてほしいです! (2019年9月20日 10時) (レス) id: eb587ffa62 (このIDを非表示/違反報告)
神夜(プロフ) - マシュマロが通信制限で使用出来ないのでボードの方に感想、リクエスト書かせて頂きました。御手数ですが見て頂けると嬉しいですよろしくお願いします。 (2019年9月18日 5時) (レス) id: 1c640baa7c (このIDを非表示/違反報告)
言ノ葉(プロフ) - 美咲さん» コメントありがとうございます!雨月さんめっちゃ美人ですよね……。10話の耳かけスタイルがとても色気爆誕でやばかったです…… (2019年9月16日 21時) (レス) id: 50b948882d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:言ノ葉 | 作成日時:2019年8月30日 15時