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演奏が終わると、沈黙が会場を包む。
しかしその後、弾くような歓声と拍手で包まれた。
「………っ」
その中で、Aはずっと、ただ、頬に伝う涙を拭えないまま、その場に立っていた。
さみしくないよ。楽しくやってるよ。
好きな音楽。楽しい昼休み。
大切な人。
新しい、好きな人。
君にもう一度話せたら。
********
「良かったね!」
「俺2番目のバンド好きだわー!」
「あれな!」
ライブが終わった後、多くの観客が真冬達のバンドの話でもちきりだった。
それはもちろん、出演者側も。
春樹と梶が打ち上げに参加してる中、真冬はライブハウスの外でひとりぽつんと座っていた。
泣き腫らしたような目で、まだ、ライブの感覚が抜けない。
そして、演奏後。
“お前はよく頑張った”
上ノ山と、キスをした事。
全てがまだふわふわと漂っている感覚が残っている。
すると、そんな真冬の脚をコツンと蹴る者がいた。
「…何。その顔」
「うっせぇ」
同じように泣き腫らしたような目で、柊は真冬の隣に座る。
「…由紀は、お前が音楽が好きなこと知ってた」
「っ」
「たまに鼻歌を歌ってるお前を、あいつはよく見てた。ずっと。
由紀は、お前のために歌を作ってやりたかったんだよ。
でもお前は、一緒にやろうって言葉が欲しかったんだな」
「…柊。ライブ、どうだった?」
「へったくそ!指回って無さすぎ」
「…柊」
「何」
「俺、今、新しい好きな人がいる」
「……いいんじゃねぇか。せいぜい頑張れや」
「応援してよ」
「めんどくせぇ」
ははっと笑みがこぼれる。
柊のなんてことの無い反応が、嬉しかった。
「そういえばAは?」
「え?」
「ライブ見に来てたんだろ」
「……あ」
「まさかお前、今の今まで忘れてたのか…?
こんな時間に女一人で危ねぇだろ!」
「相変わらずお父さんみたいなこというね」
「誰が父さんだ!」
「連絡する」
スマホを片手に立ち上がった真冬は、走り出そうとする前に、柊の方を振り返る。
「柊……ありがとう!」
「……おう」
ポケットの中で、スマホが震えた。
ポケットから取り出し着信を確認すると、ゆっくりと耳に当てる。
《A?今どこにいるの?家?》
「…公園」
《公園?家の近くの?》
「うん。あのね冬ちゃん」
話したいことがあるの。
#09
冬のはなし
To be continued…
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に - 最近ギヴンにハマった20代ですが、こちらの小説ほんっっっとうに最高です!!!!夢主の行動・気持ち・考えなど文からとても伝わってきて読みやすいです。お忙しいと思いますが、完結に向けて頑張ってください。楽しみにしております!! (2020年4月30日 13時) (レス) id: e8737ae1a9 (このIDを非表示/違反報告)
美咲 - アニメ終わって落ち込んでたら、映画っ!嬉しすぎて……2020年まで頑張っていけそうです!言ノ葉さん最終話までお疲れ様でした!番外?リクエストも更新、楽しみにしてます!に (2019年9月20日 15時) (レス) id: 7ef2d991dc (このIDを非表示/違反報告)
蓮華 - はじめまして!梶さんと春樹とのお話を書いてほしいです! (2019年9月20日 10時) (レス) id: eb587ffa62 (このIDを非表示/違反報告)
神夜(プロフ) - マシュマロが通信制限で使用出来ないのでボードの方に感想、リクエスト書かせて頂きました。御手数ですが見て頂けると嬉しいですよろしくお願いします。 (2019年9月18日 5時) (レス) id: 1c640baa7c (このIDを非表示/違反報告)
言ノ葉(プロフ) - 美咲さん» コメントありがとうございます!雨月さんめっちゃ美人ですよね……。10話の耳かけスタイルがとても色気爆誕でやばかったです…… (2019年9月16日 21時) (レス) id: 50b948882d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:言ノ葉 | 作成日時:2019年8月30日 15時