7 ページ27
ショーケースの前でしゃがみ込み､夢中になる2人を見て､上ノ山もフッと笑った｡
｢エフェクターって､どういうのがいいの？｣
｢うーん｡初めに買うなら､俺はひずみ系が鉄板だと思う｣
｢ひずみ？｣
｢まだギター触ったばっかで､出したい音のイメージもない内からマルチエフェクターとか買っても､財布が痛手を負うだけだし｡
俺はこの辺がいいと思う｡｣
そう言って上ノ山が差し出したのは､コンパクトなサイズで深い青のエフェクターだった｡
｢可愛い｣
｢確かに｡意外と可愛いよな｡試してみるか？｣
｢えっ｡試せるの？｣
｢試さないとどんな音が出るかわかんねえだろ ？｣
上ノ山が店員に声をかけに行くためその場を離れると､真冬は聴こえてきたギターの音に反応する｡
機材の質を確かめるために､小さなスタジオが完備されていて､そこから聞こえてきていた｡
｢冬ちゃん？どうしたの？｣
｢みんな､バンドやってるんだ｣
スタジオで弾いてる人も､店内で機材を見ている人も､みんな自分と同じようにバンドをやっている｡
当たり前ではあるのだが､真冬にはそれが新鮮に感じて､Aもどこか嬉しそうに｢そうだね｣と返したのであった｡
やがて店員から許可を得た上ノ山が戻ってきて､スタジオでエフェクターにアンプとギターを繋げる｡
｢ちょっと鳴らしてみ？｣
｢うん｣
｢それがなんも繋げてない音な？｣
次に上ノ山はエフェクターのスイッチを入れてもう1回弾いてみろ｡と真冬に視線を送る。
真冬は先ほどと同じように弦にピックを滑らせる｡
すると先程とは響きも重みも違う､重音感をヒシヒシと身体に感じる音が響いた｡
真冬はパアッと顔を輝かせる｡
｢エフェクター通すとこんなに違うんだね！｣
｢それがオーバードライブだ｣
｢すごい……！｣
｢それにするか？｣
｢うん！｣
と､決まったのはよかったのだが……｡
｢………｣
｢やっぱり新品はこれくらいするよな｣
｢そうだね｣
1万2000円｡音楽に慣れ親しむAと上ノ山にとっては､まぁそうだよねという値段だったが､真冬にとっては絶望的だったのだろう｡
しばらく固まっていたが､しょんぼりとしてお店を後にした｡
お店を出ると､上ノ山は来た時とは反対方向に歩き出す｡
｢上ノ山君？駅こっち｣
｢こっちだ｣
そう言って再び歩き出した｡Aと真冬は顔を見合わせて､とりあえず上ノ山を追いかけた｡
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 180人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
言ノ葉(プロフ) - りぃさん» はじめまして！読んでくださってありがとうございます！笠井さんについてはもうほんと賛否両論ですよね！これからもよろしければ見守っていただけたらと思います！ (2019年8月21日 22時) (
レス) id: 229c4ca60f (このIDを非表示/違反報告)
りぃ(プロフ) - はじめまして。 ギヴンの小説を探してて見つけたときすっごい嬉しかったです！こういう素晴らしい作品を待ってました！！ 僕も真冬のことをベラベラしゃべっててなんやねん！この女！！(口悪い)と思ってました← (2019年8月21日 10時) (レス) id: 649b8a9daf (このIDを非表示/違反報告)
星の桜(プロフ) - 琴葉さん» 好きになった理由に凄く共感しました。それと...私も笹井さんの気持ちは微塵も理解出来ませんでした(ｺｿｯ (2019年8月18日 10時) (レス) id: 847ebd8ac8 (このIDを非表示/違反報告)
琴葉(プロフ) - 星の桜さん» コメントありがとうございます！これからもマイペースに進めていきますので､よろしければこれからも見守ってください！ (2019年8月15日 7時) (レス) id: 229c4ca60f (このIDを非表示/違反報告)
琴葉(プロフ) - 神夜さん» ありがとうございます！アニメを見たらハマってしまいまして､探したらまだ作品が0だと言うことを知って｢なら自分で書けば良くね？｣と思ってはじめました(笑)宜しければこれからもよろしくお願いします！ (2019年8月15日 7時) (レス) id: 229c4ca60f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：言ノ葉 | 作成日時：2019年8月10日 0時
