4話 ページ20
あ彼女の異能力―――それは彼女の歌を聞いた者の記憶を失わせるもの。社内のだれもがとりとめる言葉を叫ぶ中、そのとき彼女が声を張って言った。
「もう、大丈夫です。ごめんなさい、でも、これで、最後だから。
......今まで、本当に、ありがとうございました。私だって......みなさんに、忘れられたくなんて、ないんです」
彼女は顔をあげて、それは実にやわらかで、崩れてしまいそうな笑顔を見せた。その一瞬の儚い表情に、社内の者は言葉を失った。
「月に、吠える」
言い放った瞬間に、目の前はやわらかい光につつまれた。それは、やさしい霧のような光であった。
ばたばたと、意識をなくすように、人が倒れてゆく。その音が止み、光の明ける頃には、その部屋に彼女はいなかった。彼女だけが、いなくなった。
ただ、一人の男―――包帯を巻いた男が、横たわる人の中、それらを見下ろすようにしてうつむきたたずんでいた。彼はそうして微動だにしない。
「私にも、忘れさせてよ」
あるとき男がつぶやいた。
「また一人、私の大切な人が、消え去ってしまった」
つぶやきは、誰の耳に入るまでもなく、部屋の空気に吸われて消えた。
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うずのしゅげ(プロフ) - 猫さん» ありがとうございます笑笑 そうですね、本当に彼女には報われてほしいですね☺️☺️ ドスくんが楽器を弾いて、夢主ちゃんが歌ってとかっていう穏やかで幸せな日々がありそうで妄想の翼が広がりますね!!笑 (7月17日 10時) (レス) id: c82952eeb4 (このIDを非表示/違反報告)
猫 - ズビッズビッっべ、別に泣いてないですけど、夢主ちゃんは幸せであって欲しいですねズビッ (7月8日 10時) (レス) @page24 id: a46c77cf46 (このIDを非表示/違反報告)
吹原思木(プロフ) - ラいむさん» ラいむ様!!長い間、本当にお世話になりましたー−!!!こちらこそ、今までありがとうございました。受験勉強がんばってきます!何度も何度もしつこいようですが、本当に、ありがとうございました! (2022年10月23日 21時) (レス) id: 82c6167370 (このIDを非表示/違反報告)
吹原思木(プロフ) - 眠夢@低(無)浮上さん» わー−!!うれしいですー!そうですねー、もうこの作品を書くことがないんだと思うと、本当に私も寂しい気持ちです、、わざわざコメントありがとうございました!次作でもよろしくおねがいしますー−! (2022年10月23日 21時) (レス) id: 82c6167370 (このIDを非表示/違反報告)
吹原思木(プロフ) - 黒猫さん» 上から読み返してくださったんですか......!! いやもうまじで、うれしいです!!黒猫様にはお世話になりました、今まで本当に、ありがとうございました!!受験勉強も、がんばってきます! (2022年10月23日 21時) (レス) id: 82c6167370 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うずのしゅげ | 作者ホームページ:https://twitter.com/8YgT1yhKwYPDEd7
作成日時:2022年8月11日 22時