005 緋色の記憶�� ページ6
私は13舎13房の隣にある牢に案内された。
13舎13房と言われているのに、何故違うところに入っているのかはよくわからないが、ハジメが言うに、「あそこにはいない方がいい」とのことだ。
「広い……し、畳……」
灰色のひび割れた壁はとにかく冷たかった。
ただ、床に敷かれた畳には＿＿＿＿何故か温かみを感じた。
「……母さん、父さん……渚さん」
私はそうポツリと言葉を零してから、睡魔に身を委ね、畳の上に転がった。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
「ねぇ母さん、父さん。私っておかしいの？」
「いいや、そんなことないさ」
「Aは素晴らしい才能を持った人だからね。おかしくなんかないよ」
「えへへ。ありがとう」
小さな小さな女の子が、優しそうな女性と男性にニコニコしながら話しかけている。
その女の子はすごく嬉しそうに笑っていた。
男性はその少女の頭をゆっくり、優しく撫でていた。
女性は二人の姿を温かく、微笑みながら見守っていた。
あぁ、今度は少女が泣いている。どうしたのだろう。
「渚さん……ヒック……みんなが、私の、こと……『バケモノ』、って……ヤダよ、そんなの……」
「お嬢様、貴女は良い才能に恵まれました。これを正しく使いなさい。そうすればきっと、貴女は素晴らしい人になれますよ」
すごく優しく声をかけてくれるその人は誰だっただろうか。
確か、あの人は私を引き取ってくれたうちのお手伝いさん。名を『天王寺 渚』と言ったか。
そうだ、あの人のおかげで私は今まで生きてこられたんだ。
そうだ。そうだ＿＿＿＿
「なんで……なんで渚さんが!?なんで渚さんが死なないといけないのよ⁉」
「ヤダよ……行かないでよ……もっとお話聞かせてよ!ねぇ!渚さん！」
少女の悲痛な叫び声は空に響き、消えていく。
後ろでその姿を見守る大人たちは、少女のことを冷たい目で見る。
大人たちはこのへんな少女をかまっていた渚さんを嫌いだったのかもしれない。
そのことに気付いた少女は、夜の間に家を抜け出し、闇に浸かった。
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白夜狼 - とても面白い作品でした！ところで一つ気になったのが、『夜桜』ではなくて『四桜』ではないでしょうか？ (2018年11月15日 21時) (
レス) id: baf811e79e (このIDを非表示/違反報告)
くろくろ(プロフ) - リンさん、コメントありがとうございます!! (2017年11月21日 21時) (レス) id: a73440cd59 (このIDを非表示/違反報告)
リン - とても楽しかったです!! (2017年11月21日 19時) (レス) id: baf9cf8c73 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：くろくろ | 作成日時：2017年10月31日 6時
