２０３話「犠牲者ビデオ１」 ページ9
モニタールームに戻れば、ケイジさんは別の場所を探しに行ったのか姿は無かった。
１人で見るのはやっぱり心細いけど...覚悟を決め、真ん中のモニターを起動して１つ目のビデオを再生した。
女「いや...！！なに、これ...！？
動かない...！！足が...！！」
ビデオを付ければ、女の子の声が...聞こえて来た。
えっ...女の子？
画面に表示されていたのは...あの３人の誰の顔でもなく......見た事の無い、高校生くらいの女の子の姿だった。
足は...鎖の様な物で固定されていて、女の子の周囲には鋭い棘の様な物がジリジリと迫って来ている。
［最初の試練、終了まで１０秒前です。］
聞こえて来る...最初の試練と言う音声。
この犠牲者ビデオって......最初の試練の犠牲者の......ビデオだとでも言うの！？
女「誰！？なんで私にこんなことするの！？
もう嫌だ！！
試練とか...意味わかんないよ！！
お母さん！！お父さん！！誰かぁ！！
助け...てぇ...！！」
身動きが出来ないまま...悲鳴を上げ、助けを求める様に...手をこちらへと伸ばしてくる。
......人間が本当に最期の時に心から求めるのは...両親であると聞いた事があるけれど...それをこんな形で理解したく無かった.........。
［.........時間切れです。
まもなく、仕掛けが作動いたします。
記念に最期の言葉をひとつだけどうぞ。］
女「やめてぇ！！死にたくないよぉ！！」
女の子の結果は......ここにいない以上、分かっていた事とは言え...棘によって、串刺しにされてしまった。
女「ガ...ァ...ァ......。
い...た...い...よぉ...おか...あ...さ......。」
『.........っ...！』
こんな事が...私が呑気に眠りから覚めて、部屋から出ようとしていた時に行われていたなんて......。
どうしようも無い事とはいえ、改めて本当に人が死んでしまっていたと言う事実と痛々しいその姿に思わず目を背けたくなった。
もし...生きていたら、この子は...ここにいたんだ。
生きて...ここにいたんだ......。
名前も分からない女の子。
それでも...確かに生きていた。
そして...見覚えのあるこのフード。
カンナちゃんのお姉さんのスカートやミシマさんのネクタイ、カイさんのエプロン、ジョー君のヘアピンの様に...この女の子が身に付けているフードをノエルが身に付けていた。
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作者名：伊豆花織 | 作成日時：2022年10月10日 18時
