死なないために足掻きましょう。５【キミガシネ】 (ページ27)

今日:15 hit、昨日:0 hit、合計:9,031 hit

２２１話「諦めないで」ページ27

『私...は、別にどうだっていいんです。
ケイジさんが誰を殺したとか......誰の幻影とか...。

でも...ケイジさんは苦しんでるんでしょ......。
だから...側にいたいの...。』

言葉では...上手く表現が出来ない。
だから...ケイジさんの胸に抱き着いた。

ケイジさんの大きな身体は...私の手では回し切れず、両手は背中へ置く形にはなってしまったけれど...。

ケ「A...離れてくれ。
言っただろ......オレは...。」

『貴方が...自分を信じられないなら、私がその分も貴方の事を信じる。

だから......私の事を諦めないで...。
貴方に...ケイジさんに...惹かれてるの。
でも...まだあの人の事もあって、一歩踏み込めない...。

お願い...待ってて欲しいの......。』

心の中で...過去にしようと思っている思いが......その事を考える度に記憶に薄くなった声で語りかけて来る。

何か......大きな切っ掛けがあったら、それすらも乗り越えられると思っている。
でも...まだその時は来ていない。

ケ「ズルいね...A。
諦めないでって...その言葉を聞いたら、また期待しちゃうよ...。」

いつの間にか...ケイジさんも私の事を優しく包み込んでくれていて、ドクドクと速くなった心臓の音が...心地好く聞こえている。

『期待......してて下さい...。
私も...ちゃんと貴方に伝えたい......。』

ケ「ああ...。」

ジワジワと私を抱き寄せたまま歩みを進めるケイジさん。
戸惑って、それに合わせる様に......と下がって行けば、気付いた時には...膝裏にベッドマットの縁が触れていた。

それでも止まらないケイジさんの動きに、それ以上動かせなかった足はベッドの縁に膝を崩され...ケイジさんに身体を支えられたまま、ゆっくりとベッドに背中を付けていた。

『わっ...。』

ケ「ククッ...大丈夫かい？」

そんな事を言いながら...支えてくれていた頭から手を抜く時、髪の毛をまとめていたバレッタを器用に外すと...スルリと抜き取られてしまった。

『ちょっ...ケイジさん...！

っ......。

これ以上は...ダメ...ですよ...。』

僅かにそう言う感情を向けていても、恋人で無い男性に身体は許せない。

ケ「うん...これ以上はしない。
でも、今日はオレの事を１人にしてくれ無いんだろう？

ズルい事言ってるかもしれないけど...今晩は一緒にいてくれるかい？」

もう...私はこの熱っぽい視線から逃れる事が出来なくなってしまっている。
だから...小さく口から出てきたのは...。

『はい...。』

の言葉だけだった。