▲ ページ36
「そういえば観月君ってさ」
「はい」
「テニス部、だったんだよね」
「……そう、ですね」
皿の上のクッキーが無くなりそうな頃、何気なく飛ばした質問に彼は少し戸惑って答えた。特に意味があって聞いたわけではない。ただ、彼の反応は少し──いや、かなり気にかかる。
「引退したばっかでしょ?こんなとこに居ていいの?」
知りたいという思いが強すぎて、少々きつい言い方をしてしまったが、彼はあまり気に留めず、困ったように眉を下げて紅茶を一口啜った。
「僕は……裕太君を初めとする部員達に酷いことをしました。きっと、僕達はチームの結束力で負けてしまったのです」
自嘲気味にそう言って笑った彼は、どこか弱気だった。
「だからこそ彼には──裕太君には、信頼してもらえる部長になってもらわなければいけません。…………まあ彼の人柄なら、それは容易いでしょうが」
部員を大切に思う彼の姿は、とても酷いことをするようには見えなかった。ふと、思い出す。地区大会を境に、彼の物腰が柔らかくなった噂を聞いたことを。
「……観月君は、優しいよ」
「…………どうでしょう、ね」
彼が曖昧に微笑む。そこに言葉はなかった。何事も無かったかのように、クッキーの最後の一枚を口に放り込む。
心地の良い静寂に、紅茶の水面が微かに揺れた。
---
リクエストで「観月はじめ」でした。ありがとうございました。
常に募集しておりますので、お時間は多少頂きますが、是非リクエストお願いします。
ミッドナイト・ラプソディ/丸.井→←浪花節的ティーブレイク/観.月
66人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「テニスの王子様」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紫梦(プロフ) - メロンさん» 作業用に仁王君の曲探してたら見つけました。とても良い曲でした!笑 ほんとにリクエストに沿えてるか不安でしたが、そう言って頂けて嬉しいです。リクエストありがとうございました!よろしければまたリクエストお願いします。 (2018年8月31日 22時) (レス) id: 231b2007bc (このIDを非表示/違反報告)
メロン - Fake聞きながら、描いたんですね笑。可愛かったです!リクエストありがとうございました!また、機会があればよろしく御願いします! (2018年8月31日 22時) (レス) id: fd95f0d8fd (このIDを非表示/違反報告)
紫梦(プロフ) - メロンさん» 了解です!できるだけご期待に添えられるように頑張ります。少々お時間頂くかもしれません…! (2018年8月26日 8時) (レス) id: 231b2007bc (このIDを非表示/違反報告)
メロン - 紫梦さん» では、お言葉に甘えて…。初で奥手な仁王くんがみてみたいです~(^w^) (2018年8月26日 2時) (レス) id: fd95f0d8fd (このIDを非表示/違反報告)
紫梦(プロフ) - メロンさん» 世界観だなんてそんな…!私には勿体ないくらいの褒め言葉です…ありがとうございます!仁王くんですね、了解致しました!なにか設定やシチュなどのリクエストあればお願いします〜前の仁王君と被るといけないので! (2018年8月25日 21時) (レス) id: 231b2007bc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:紫梦 | 作成日時:2018年7月31日 21時