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ああ、やはりこの人を好きになれそうにもない。どこまでも先を見通すその眼が、余裕の顔で華麗に勝ってしまうその姿が、気に食わない。



周囲から『天才』と呼ばれていた。ただ少し、周りより動けて飲み込みが早いだけなのに。その名は中等部に上がってからも付きまとい、今も尚、2年生にして唯一の正レギュラーである私はそう呼ばれ続けている。


『天才』というプレッシャーは、勝つたびに重みを増していった。
「天才である彼女は必ず勝ってきてくれる」「天才だからなんでも出来る」といった具合に、どの場面においても重圧をかけられるのだ。





自分で言うことではないかもしれない。が、
何より私はプライドが高かった。その重圧を跳ね除け、華麗に勝ちを決めなければならないといつも自身で自身を追い込んだ。そうしないと──心が壊れてしまいそうだった。




「……私は貴方のように根っからの自信家ではありません。だから、努力しか頼れるものはないんですよ」
「勘違いするな」
「…………え、」







低い声だった。思わず彼に視線を合わせ、ぎょっとした。いつも自信に溢れた瞳は苦しそうで、余裕に吊り上げられた口元も何かを悔やむようにキツく噛み締められている。こんな彼、誰が見たことあるだろうか。

彼はラケットとボールを一個、手に取って壁に向かって打ち込んだ。鋭いスマッシュだった。その場の空気が一瞬凍りついたようにも思えた。
彼がラケットを手放すと、その手の内に、……具体的には指の付け根に、常識的には有り得ないほどの無数のマメができているのが見える。言葉を失う。





「……それ、」
「幾ら素質があろうとも、それを生かすのも殺すのも自分自身だ。素質だけに頼って怠けていれば、何れ努力に敗れる」

その時、私は気づいてしまったような気がした。頂点に立つ彼の、強みであり最大の弱みに。






「……ま、勿論努力だけじゃ頂点には立てねぇがな。ただ、ひとつ覚えとけ。──努力せずに強くいられる人間なんていねえんだよ」









彼が去ったあとのコートに、この時期にしては珍しい涼しい夜風が吹く。
いつの間にか空には星が煌めいている。こんなベタな表現を使うのは不本意だが──星々が私を応援してくれているようだった。




私は私自身で、自信と勝利を掴み取ってやる。
瞬く夜空にそう叫んでやりたくなった。


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続いて順位を頂きました。ありがとうございます。

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紫梦(プロフ) - メロンさん» 作業用に仁王君の曲探してたら見つけました。とても良い曲でした!笑 ほんとにリクエストに沿えてるか不安でしたが、そう言って頂けて嬉しいです。リクエストありがとうございました!よろしければまたリクエストお願いします。 (2018年8月31日 22時) (レス) id: 231b2007bc (このIDを非表示/違反報告)
メロン - Fake聞きながら、描いたんですね笑。可愛かったです!リクエストありがとうございました!また、機会があればよろしく御願いします! (2018年8月31日 22時) (レス) id: fd95f0d8fd (このIDを非表示/違反報告)
紫梦(プロフ) - メロンさん» 了解です!できるだけご期待に添えられるように頑張ります。少々お時間頂くかもしれません…! (2018年8月26日 8時) (レス) id: 231b2007bc (このIDを非表示/違反報告)
メロン - 紫梦さん» では、お言葉に甘えて…。初で奥手な仁王くんがみてみたいです~(^w^) (2018年8月26日 2時) (レス) id: fd95f0d8fd (このIDを非表示/違反報告)
紫梦(プロフ) - メロンさん» 世界観だなんてそんな…!私には勿体ないくらいの褒め言葉です…ありがとうございます!仁王くんですね、了解致しました!なにか設定やシチュなどのリクエストあればお願いします〜前の仁王君と被るといけないので! (2018年8月25日 21時) (レス) id: 231b2007bc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紫梦 | 作成日時:2018年7月31日 21時

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