▲ ページ32
……もしかしたら、青学が嫌いなわけじゃないのかもしれない。
聞ける、だろうか。
鼓動がいやに速まる。全身を駆け巡る血液のどくどくという音が、大きくなったような気がした。不安が強まる。
好きだから傷つけるようなことしたくない。それは当たり前だ。嫌な出来事だとしたなら触れないであげたい。でも、知りたい。 欲望に忠実な自分を殴りたくなった。
──気がつけば生まれていた私たちの溝。このまま放っておけばそれは深く広がって、二度と埋まらない。そう感じさせられる。
それだけは嫌だ。知りたい。聞かなきゃ。そんな使命感が私を突き動かす。
「あのさ、裕太君」
「何だよ」
「……なんで、転校したの?」
何となく凍り始めていた空気が完全に凍り付いたような静けさだった。
分かっていた。聞いたらこうなることを。だからこそ、奥手になって、本心も疑問もしまい込んで。
けど、そのままじゃ駄目だから。彼の核心部分に、迫る。
彼が勢いよく立ち上がる。その音に肩が震えた。
やっぱり聞かなかったことにして、と言いたくなった。しかし、彼の表情を見ないことでそれを思いとどまる。
暫くの沈黙。
「…………俺は不二周助の弟としか見られてなかったんだ」
「あ……」
ハッとして声を漏らす。慌てて顔を上げれば、彼は頷いて目を閉じる。怒って、ない?
彼は溜息をついて、目線をケースの中のラケットに落とした。
「だから、転校した。青学にいたら兄貴より上にはいられない」
「……裕太君、」
「…………と、思ってた」
清々しい泣き笑顔で彼は振り向いた。そして私は──不覚にも、その顔にドキリとしてしまった。だってあまりにも、素敵だったから。
「でも、実際違った。俺はただ──兄貴を言い訳にしてただけなんだ」
「……うん」
「……まあでも、ルドルフで観月さんには世話になってるよ」
「…………そっか」
嬉しそうな彼の顔に、頬が思わず緩んだ。
66人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「テニスの王子様」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紫梦(プロフ) - メロンさん» 作業用に仁王君の曲探してたら見つけました。とても良い曲でした!笑 ほんとにリクエストに沿えてるか不安でしたが、そう言って頂けて嬉しいです。リクエストありがとうございました!よろしければまたリクエストお願いします。 (2018年8月31日 22時) (レス) id: 231b2007bc (このIDを非表示/違反報告)
メロン - Fake聞きながら、描いたんですね笑。可愛かったです!リクエストありがとうございました!また、機会があればよろしく御願いします! (2018年8月31日 22時) (レス) id: fd95f0d8fd (このIDを非表示/違反報告)
紫梦(プロフ) - メロンさん» 了解です!できるだけご期待に添えられるように頑張ります。少々お時間頂くかもしれません…! (2018年8月26日 8時) (レス) id: 231b2007bc (このIDを非表示/違反報告)
メロン - 紫梦さん» では、お言葉に甘えて…。初で奥手な仁王くんがみてみたいです~(^w^) (2018年8月26日 2時) (レス) id: fd95f0d8fd (このIDを非表示/違反報告)
紫梦(プロフ) - メロンさん» 世界観だなんてそんな…!私には勿体ないくらいの褒め言葉です…ありがとうございます!仁王くんですね、了解致しました!なにか設定やシチュなどのリクエストあればお願いします〜前の仁王君と被るといけないので! (2018年8月25日 21時) (レス) id: 231b2007bc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:紫梦 | 作成日時:2018年7月31日 21時