検索窓
今日:3 hit、昨日:16 hit、合計:53,267 hit

第10話 ページ10

七辻屋の饅頭を買って家に帰ると、Aはやはり窓の外を見ていた。

何を考えているのだろう。

……もしかしたら浅葱さん、なのだろうか。




「ただいま」

「ああ、おかえり」


Aは気づいていたのか、俺の声に驚くこともなく答える。


「七辻屋の饅頭買ってきたぞ。ここのは美味いんだ」

「…七辻屋」

「店の名前だよ。ほら、」


袋から饅頭をひとつ取り出して、Aに手渡す。
Aはそれを受け取ると静かに食べだした。饅頭を一口食べ終わったところで、Aの目が少しだけ輝いたのが分かった。相変わらずの無表情ではあったが。


「……美味い」

「だろ?俺も先生も、七辻屋の饅頭は好きなんだ」


初めて会ってから3、4日ほど経った。Aはほぼ無表情であるが、目が少し輝いたり昔を思い出して切なそうにするのを見るに、人を信じられた時はもっと感情が豊かだったのかもしれない。


「…本当に、美味い……







………浅葱にも、食べさせてやりたいな」




小さく零した言葉だったが、部屋は静かなため、俺と先生に聞こえるには十分だった。

無意識だったらしいAは、自分の発言に驚いたのか目を見開いた。


「A…」

「ぁ、いや…これは、」


更科浅葱という名前を聞いて、Aの目に浮かぶのは悲しみと怒りだった。

だから俺はその人の事を恨んでいるのかと思っていたが、どうやら違うらしい。

いや、恨んではいるのだろう。だがそれ以上に、Aは浅葱さんをとても慕っていたのだと思う。

1度助けたカラスとの縁だ。
ならば最後まで助けたい。



「…なぁ、A。浅葱さんの事、探しているんだろう?」

「…っ」

「俺も協力するよ。…浅葱さんは、もうこの世にはいないけれど、手がかり位はあるかもしれない」

「!…夏目、」


Aは少し驚いた顔をした。だがその目に映ったのは、多分安堵だった。

第11話→←第9話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (103 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
192人がお気に入り
設定タグ:夏目友人帳 , 男主
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ここ - なんで面白いとこで止めるんですかあああああ続きをください!!!!更新待ってます!! (2018年10月6日 23時) (レス) id: 13a4e8f4bd (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - 鈴木さん» いえ、私が単にあまり読んでないんで知らないだけかと…。これからも更新頑張ってください!! (2017年2月20日 14時) (レス) id: bb18c895b3 (このIDを非表示/違反報告)
鈴木(プロフ) - 時雨さん» ありがとうございます!妖怪主多いと思ってたんですが少ないんですね… (2017年2月9日 9時) (レス) id: 6735b4f99f (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - 妖怪主は初めて見ました!凄く面白いです!続き楽しみに待ってます(`・ ω・´)ゞビシッ!! (2017年2月9日 8時) (レス) id: bb18c895b3 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:鈴木 | 作成日時:2017年1月2日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。