第7話 ページ7
「ただいまー…」
「おかえり、夏目」
家に帰ると、Aが窓の外を見ていた。声をかけると、ゆっくりと姿勢を正し、無表情のままそう言った。
「あれ、ニャンコ先生は…」
「斑なら、山にいる仲間達と酒を飲みに行った」
またか、と呆れたが、Aが「夕餉には戻ると言っていた」と言ったので、それならいいかと納得することにした。
「あ、包帯。換えなきゃいけないな。後ろ向いてくれ」
「…そうか。分かった」
まず翼からだと告げると、Aは後ろを向いて、黒い翼を痛くない程度まで広げた。
包帯をとると、まだ癒えない傷が顕になった。痛々しい傷に思わず顔が歪む。
「一体どうしてこんな傷を…」
「知りたいのか？」
「え、」
心の中で呟いたはずが、どうやら口に出てしまっていたらしい。
俺が言うことを守ってか、Aは目だけをこちらに寄越し、尋ねてきた。
「…知りたくない…といえば、嘘になる」
烏天狗がここまで怪我をするとは思えない。よっぽど大きなことがあったのだろう。
「まさか…払い屋に襲われたのか？」
思い当たることを口にしてみると、Aは半分正しいな、と言った。
「翼は払い屋から受けたものだが、前から僕はもう弱っていた」
「え、どうして…」
「随分前に怪我をして、放置していたら悪化した」
「は！？」
驚きで思わず包帯をまく手が止まってしまった。
「僕は遠くから来た。故郷で怪我をしたが何もする気がしなくて、どうせなら遠くに行こう、と思ったんだ」
淡々と零される言葉に俺は何も言えなかった。「手、止まってる」と聞こえたため、慌てて手を再開させる。
「…弱っていたから妖力を上手く隠せなくて、払い屋に見つかった。素人だったが、かける術が特殊で、この様だ」
彼はどうしてこんなにも淡々としているのだろうか。声色に感情がない。感情を見せたのはこの家に引き止めた時だけだ。
「お前…まさか死ぬためにこの町へ来たのか…？」
「…そうだな、それもいい」
どこか達観したようなその目は、この世になんの未練もないかのようだった。
「帰ったぞ！」
暗い空気が流れた部屋に、気の抜けた声が飛び込んできた。
「お、おかえりニャンコ先生」
「…おかえり」
ニャンコ先生はやはり酒を飲んでいて顔が赤かった。だが足取りはきちんとしていて、まっすぐAの方へと向かっていった。
「何か用か」
「お前、更科浅葱という男を知っているか」
Aが感情を顕にしたのはこれが2度目だった。
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ここ - なんで面白いとこで止めるんですかあああああ続きをください！！！！更新待ってます！！ (2018年10月6日 23時) (
レス) id: 13a4e8f4bd (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - 鈴木さん» いえ､私が単にあまり読んでないんで知らないだけかと…｡これからも更新頑張ってください！！ (2017年2月20日 14時) (レス) id: bb18c895b3 (このIDを非表示/違反報告)
鈴木(プロフ) - 時雨さん» ありがとうございます！妖怪主多いと思ってたんですが少ないんですね… (2017年2月9日 9時) (レス) id: 6735b4f99f (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - 妖怪主は初めて見ました！凄く面白いです！続き楽しみに待ってます(`･ ω･´)ゞﾋﾞｼｯ!! (2017年2月9日 8時) (レス) id: bb18c895b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鈴木 | 作成日時：2017年1月2日 13時
