SixTONESのもうひとつの物語 (ページ34)

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松村北斗side ページ34

人目見た時すごい子だって思った。
演技に引き込まれた。

Aは先輩でありながら年下。
どんな風に声をかけていいか分からないし、人見知りだし、女の子だし…
それにAは絡みづらかった。
少し似たところがあったからかもしれない。
隙を見せないし、バカ高いプロ意識。
しかもアクションシーンでの妥協も一切無し。
ほとんどセリフがないにもかかわらず演技はめちゃめちゃ上手いのが分かる。
憧れた。年下とか性別とか関係なくすげえなって思った。

バカレアの映画化が決まると前よりは話すようになった。なんだかお互い敬語だったけどちょうどいい距離感だった。
Aを見ていると俺ももっと演技がやりたいという気持ちが大きくなっていった。

バカレア組として仕事をしていくと歌とダンスまでお化けなみに上手かった。
こんなに完璧で大丈夫なんだろうか？と心配すらした。

バカレア組としての仕事が減っていったとき訃報が入った。
白井怜が事故で亡くなったらしい。
白井怜もまた、才能のある人だった。

Aは大丈夫だろうか、そればかり考えた。
連絡先なんて知ってるはずもなく、しばらく会うことも出来なかった。

数日後少クラで久しぶりに見たAは辛そうだった。そりゃそうだ彼女にとって1番大切な人を亡くしたのだ。それは15歳の彼女に押し付けるには辛すぎる現実だった。

その日歌った絆は伝説と言っても過言ではないと俺は思う。誰の心にも残っただろうし、彼女もそれをきっかけに死を受け入れられたのではないだろうか。

ある日しばらく歌っていなかったAが少クラに出演すると噂が流れてきた。その通り彼女はまたステージに立った。
すぐに違和感を抱いた。感情がない。直感でそう思った。あの豊かな表情も何も無かった。

それからドラマや、舞台を終えてまたステージに戻ってきたAはあの高度な演技力で誤魔化した笑顔を取り繕っていた。Aのホントの笑顔を見たことがある俺にはすぐ分かる。きっと他のメンバーもそう。

きっともう一緒に仕事出来ないんだろうなそう心の中で呟いた。