SixTONESのもうひとつの物語 (ページ31)

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田中樹side ページ31

兄から話は聞いていた。
すごい女の子がいるって。

ほんとに2人は凄かった。
歌も歌えれば、ダンスもアクロバットもできる。
さらにAの演技もすごくて、ドラマはよく見てた。

他のJrは悪口を言ってるやつもいたけど、馬鹿だなーと思ってみていた。
あんなにルックスが良くて、なんでも出来るやつ他にはいない。

高校生になると一生ないと思っていた共演する日がきた。

すぐに声をかけたかったけど、チャラいと思われるのは嫌だったし、可愛すぎて声がかけられなかったんだ笑

でも地元がものすごく近いことがわかって、ある日ドラマの帰りに勇気を振り絞って一緒に帰ろうと誘った。

最初は｢そういうのファンに見つかるとダメだと思う｣と言われてしまった。
でも俺は落ち込むどころか
プロ意識どんだけ高いんだよと尊敬した。

ある日本当に帰りが遅くなった日、今日は危ないからと誘った。

疲れているだろうから、電車で寝顔が見れるかと思ったのにAは絶対寝なかった。寝顔なんて見せられないと思っていたのだろうか。

でもそれからは一緒に帰るようになり、バカレア組として仕事も一緒にできるようになった。
楽しかった、この仕事してなければ告るくらいAは可愛くて良い奴だった。

才能はすごいのに決して天狗になることもないし、何より時々見せる笑顔が本当に可愛かった。

けれど、バカレア組の仕事はどんどんなくなっていった。

そしてある日、その知らせは入った。

｢怜がなくなった｣

何かあったのかと聞いてきたきょうもっちゃんに伝えた自分の言葉を頭で繰り返す。

Aは大丈夫だろうか。いや、大丈夫なわけが無い。バカレア組で仕事をしている時もどこかで怜のことを気にかけているのを知っていたから。

少クラの現場で久しぶりに見たAはやはり辛そうで、でもどこか覚悟を決めたような顔をしていた。

その日歌った絆はAからのメッセージで、心を打たれた。他の誰にも歌えないような雰囲気に包まれた。

廊下を歩いていると泣き声が聞こえた。Aだ。すぐにわかった。
声をかけるのは違うなと思い静かにその場を離れた。

それからはAはまたドラマに出ていた。相変わらず演技は上手くて、ドラマの中ではAは笑っていた。あれはホントのAの笑顔じゃない。俺らはホントの笑顔を見た事があるからわかった。