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貴女side



貴「私もっ、健人さんのそばにいられて

幸せでしたっ、、」




最後くらい、健人さんの顔ちゃんと見て話したいのに




ぼやける視界を何度も拭って




全部を間違えた私が




最後にできること




貴「健人さんの



優しい声も



笑顔も



あったかい手も



言葉も



泣いた顔も



抱きしめてくれる腕も



全部」






正しい言葉で





貴「私にとっては、全部、大切でした。」






真っ直ぐに伝える。





貴「ずっと、そばにいてくれて



優しくしてくれて



守ってくれて



幸せな時間を、沢山、下さって」






貴「ありがとう、っ、、ございました、」






頭を下げた瞬間に





ポタポタと水滴がフローリングに落ちる音で




堪えてた涙の箍が外れてしまった。





顔を上げるに上げられなくなってしまったと思ったら




ポスッと





暖かい手が優しく触れる。





健「よく言えました。」






あぁ、





どこまで優しいんだろう。






貴「健人さんっ」






思わず顔を上げてしまって





また、泣いた顔を見せてしまう。






呼応するように





健人さんの涙でぐしゃぐしゃな顔は





いつもの




優しい表情に和らいでいく。





私を、安心させてくれる笑顔に。




泣いている生徒を宥める教師のように。






健「俺の方こそ、

大切なものを沢山くれて

ありがとう。」





私の両手を取って




大きな手がふわりと包み込む。





健「俺は何があってもAの味方だから」





そう言って、祈るように




健人さんの額にその手元が触れる。




そして、数秒もしない間にそれは解かれて。





今の言葉も、暖かい手も





まるで





“恋人”から





"昔からよく知る同僚"へと






呪縛を解くおまじないのようにも思えた。







貴「私も、」






そう言いかけて、やめた。





呑みこんだ言葉を





いつかまた、





嘘にしてしまうのが怖い。





健「A」






途切れてしまった言葉を探ることもせず





健「今日は疲れただろうから、ゆっくり休んで。」





普段と変わらない声と表情。





だから私も、いつも通り。





いつも通り





背を向けて





ドアに手を掛ける。





健「気を付けて」








貴「はい」








寂しそうに笑う眼差しに






何もできないまま





パタンッ





扉を閉めた。






貴「私も、何があってもずっと

健人さんの、味方です。」

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作者名:arry | 作成日時:2023年10月28日 0時

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