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貴女side





健「Aっ、、」




抱き留めた健人さんが




こんなに力一杯腕を回すことなんて、今まで一度もなかった。





健「Aっ.....Aっ.....」





何度も、何度も、必死に名前を呼んでくれる声も






肩に埋める顔も






子供みたいに、縋り付くように泣く姿も






全部、知らない健人さん。





それなのに





健「ごめんっ....俺が...俺のせいでっ....」





どこまでも私を責めない姿勢は健人さんのままで。





貴「なんで...」





なんで、





私は





こんなに想ってくれる人を






こんなに悲しませているんだろう。






私が、この人のそばにいればそれでいいはずなのに。





この状況からだけじゃない





ずっと、





出会った時から





その恋心に気付く前からずっと





健人さんが私のことを大切に、





大事にしてくれてることを






痛いほど分かっていた。






私はその恩の返し方を必死に探して





健人さんのことを知りたかった。





喜んでもらいたくて





伝えた言葉が





「好きです」





それだった。





それまで見えなかった





後悔も、コンプレックスも





健人さんの人間らしさが見えて





嬉しいと思った感情に





自分の知り得る言葉を当てはめた結果だった。






間違いに気付くのが遅かった。





もう、一生





会うことがないと思っていた相手の





顔も、声も、優しさも





忘れるつもりでいたから。

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作者名:arry | 作成日時:2023年10月28日 0時

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