百三十五話 ページ43
何度か打ち合いをしては負けるを繰り返した。
お互いに少し息が上がっているように見える。
……いや、私の方が息が上がっている。
『最後は呼吸を使いましょう。』
冨｢いいだろう。｣
呼吸で打ち合いをする。
私の方が押され気味だ。
………義勇さんには見せたことの無い、あの型を使うか。
『鋼の呼吸 玖ノ型━━━水刀』
木刀で出来るか分からなかったけれど、同じように鞘から刀を出す感じで意識すると出来たみたいだ。
………そこまでこの型は持たない。
『……っ！』
義勇さんは私の攻撃を受けて目を見開いた。
攻撃の仕方が変わったことと、威力が上がったことに驚いているんだろう。
今度は私が押している。
あと少し、あと少しで、初めて義勇さんに勝てる…！
視界が狭まってきた。
自分が息をしてるかわからない。
冨｢終わりだ。｣
私の手首を軽く叩き、私から刀が離れた。
それと同時に、型の呼吸も止まる。
頭がクラクラして、立てなくなる。
……気を紛らわすために、稽古をつけてもらって、やけくそになるなんて。
私はなんて酷いことをしているんだろう。
私が倒れる前に、義勇さんは私を抱きとめた。
知ってる体温にほっとして、少しずつ呼吸をする。
『す、みませ…』
冨｢呼吸をしろ。ゆっくり。｣
言われた通りに呼吸を続けると、視界もしっかりしてきてフラフラも少なくなった。
『ありがとうございます、義勇さん。』
離れようとすると、強く抱きしめられる。
…恥ずかしくなって、顔が熱くなる。
……義勇さんは、なんでこんなこと。
冨｢お前を隣で守らせてくれないか。｣
『……隣…ですか』
私の首元で、頷いた。
隣…どういう、ことなのだろう。
冨｢俺はお前を、Aを、好いている。
これから先を共にするために、隣で守らせてくれないか。｣
頭が混乱する。
私のことを、好きだと、言っているのを理解した。
なんと言ったら良いか分からず、体がとても熱くなる。
冨｢甘い、匂い。｣
首に、柔らかいものが当たり、その後よく分からないものが首を這う。
舌だと気づくのに時間はかからなかった。
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作者名：エアー | 作成日時：2020年5月22日 14時
