百三十話 ページ38
禰豆子ちゃん私の涙を優しく拭き取ってくれている。
その手を強く握って私はさらに泣いてしまう。
『やっと、禰豆子ちゃんも守れる。』
炭「A、俺を守ってくれてありがとう。
俺は他の人の所へ行ってくる。」
『わかった』
私は涙が止まらないまま当たりを見回した。
瓦礫が沢山あって、激しい戦いをしてたことが分かる。
きっと私が来る前に何度も何度も危機に陥っていたんだろう。
もっと早く、私が駆けつけられていれば…。
血がどこかしら流れているけれど、動けるようになったのでゆっくりと立ち上がる。
…貧血で頭がフラフラする。
なんとかゆっくり歩いていくと、蛇柱様がこちらに走ってきた。
…応援が来た、と考えていいのだろうか。
小「鋼水か?」
『はい』
小「負傷が酷い、それに貧血気味だろう。隠に手当してもらえ。」
『ありがとう、ございま、す』
小「宇髄がいると聞いたが、場所はどこだ。」
『最後に鬼の攻撃を受けて気を失っていたのでどこにいるか分かりません。
このまま真っ直ぐ行くと奥様たちと一緒にいると思います。』
小「そうか。」
蛇柱様は私とすれ違うように奥へと走っていった。
ここで気が抜けたのか、視界が回ってきた。
呼吸でしていた止血も、力が入らなくなりまた出血し始める。
目の前が真っ白になっていく。何も見えない。
そのまま倒れかけた時、誰かが支えてくれたみたいで地面に倒れることは無かった。
…だれ、だろう。
私はその人に体重を預けたまま何度か深い呼吸を繰り返す。
ぼんやりと視界が良くなってきた。
支えてくれた人を見ると、義勇さんだった。
…なぜ、貴方が。
『ぎゆ、さん…』
冨「俺が見ている。
ゆっくり目を瞑れ。」
『でも、私…つよくなった、のに』
冨「……守るのは俺の意思だ。
お前は頼ればいいだけだ。」
『で、も』
義勇さんがあの時のように優しく微笑む。
私の意識が半分飛びかけていて、ちゃんと聞き取れない。
冨「男ならば、好いた女を守るのは当然だろう。
それとも俺を信用していないのか。」
『…ありが、とう、ございます。』
力が入らなくなって目を瞑る。
ああ、あたたかい。
この人の体温はとても好きだ。
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作者名:エアー | 作成日時:2020年5月22日 14時