百二十三話 ページ31
私は京極屋の隣、白須屋に潜入することになった。
御館様からの手紙で、ここで鉄渋の目撃情報があったらしい。
天元様が警戒し、奥様方が潜入していることに気づき、警戒を強めたのだろう。
鉄渋だけは、私が倒さなければ。
鬼舞辻無惨を倒す時にとても邪魔になるだろう。
私は手伝いをしたり、男の人の相手をしながら情報を集めた。
もちろん、体を触られるのは嫌なので酒を飲ませ、酔わせた後に手刀で眠らせた。
そんなことをしているが、鉄渋の情報は何も入らずにいた。
｢Aちゃん、次の人に呼ばれているわ。｣
『わかりました。』
私は少し、化粧と身なりを整えて、指定された部屋へと向かった。
失礼します、と声をかけて襖を開ける。
｢鉄渋を呼んだはずだが、他の人が来たようだ。｣
ゾクリ、と嫌な気配がする。
鬼…の気配。
下弦のものよりももっと濃い…もしかして…鬼舞辻無惨…か…？
帽子を被った男はこちらを見ないで話し続ける。
｢扉を閉めろ。
鬼殺隊のお前なら分かっているだろう。｣
私は言う通りに静かに襖を閉める。
今、私は丸腰だ。被害だけは出さないようにしなくては。
命に変えても、人を守る。
｢今はお前を殺したりはしない。
私はいとも簡単にお前を殺すことが出来る。
死にたくはないだろう？此方へ来い。｣
少し距離をとって、隣に座る。
おちょこを差し出され、それにお酌をする。
そのままそのお酒を私に振りかけた。
度の強いお酒なのか、少しクラクラしてくる。
それを悟られないように、鬼舞辻無惨を見る。
鬼｢お前はよく似ている。
特に、ここにいるお前はあの女剣士によく似ている。｣
誰のことを言っているのか分からない。
私は分からないまま、警戒をとかずに見つめる。
鬼｢その目も同じだ。｣
動いたかと思うと、私は組み伏せられていた。
動こうとするが、力が強くて押し退けない。
じたばたと動いていると、手首をひとつにまとめられた。
顎を掴まれる。
鬼｢お前が俺の元に来れば、愛す対象として受け入れてやろう。
もし、それが無理というのならいずれか殺さなければならない。｣
私は、私は。
お前になんか、愛されたくない。
あぁ、私はやっぱり、炭治郎が好きだ。
諦めきれない。
『私はお前の元になんて行かない。』
鬼｢そうか。｣
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作者名：エアー | 作成日時：2020年5月22日 14時
