百二十一話 ページ29
『こ、れは……』
急いで隣の部屋の襖を開ける。
みんな一応着替え終わっていたらしく、私の行動に驚いていた。
『天元様!私も同じように潜入します!』
炭「なっ……!!」
宇「お前は潜入させない話だったはずだ。」
無言で手紙を渡す。
一通り読んだ天元様は諦めたようにため息をついた。
宇「許可する。」
炭「宇髄さん…!ダメです、Aはまだ…!」
宇「本人の意思だ。」
炭治郎は私を心配しているようだ。
善逸もオロオロとしている。
炭「A。」
『どうしたの、炭治郎。』
久しぶりに名前を呼ばれて心臓が早く動く。
普通の顔を保てているか分からない。
炭「絶対に、体は大事にしてくれ。」
『……わかった。』
炭「それと。」
ごそごそと、隊服の中から包みを取りだした。
もしかして、それって。
炭「この簪は、どうか忘れないでくれ。」
私の手を掴んで、その上に簪を置く。
…私は受け取れない。
受け取ったら、諦めきれなくなる。
『ダメだよ、炭治郎。
私はその簪を受け取れない。』
貴方はカナヲとお似合いなんだ。
私をその二人を守れればいいから。
炭「……それでも、Aに持っていて欲しい。
付けなくてもいいから。」
私が首を振って拒否をしていると、どこからか手が伸びてきて私の手にあった簪は髪に差されていた。
宇「これでいいか、竈門炭治郎。」
炭「ありがとうございます。」
きゅう、と胸が苦しくなる。
なんでそんなことをするんだろう。
炭治郎は、私にはなんとも思っていないはずなのに。
私が勝手に想っているだけなのに。
思わず苦しくなった胸元を握りしめた。
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作者名:エアー | 作成日時:2020年5月22日 14時