百十八話 ページ26
竈門炭治郎side
俺はあの日からずっと蝶屋敷の屋根の上で月を眺めた。
新月の時もあったが、必ず屋根の上で夜空を眺めた。
善逸に、簪を贈る意味を聞いてみたところ、婚約の約束らしい。
俺はそれを知らずにAに贈っていた。
それを今度は本当の意味でAに贈りたい。
Aが来るまでずっと待っているつもりだった。
しかし、あの日から一度も蝶屋敷に戻ってくることは無かった。
しのぶさんは任務などで何度か会ってるらしく、毎回俺に伝えてくれる。
それで、俺の話もしてくれるのだが、毎回Aは顔を曇らせるらしい。
…やはり、俺は、…嫌われたのか。
思い当たる節しかなくてもう無理だと、この恋心を捨てたくなる。
けれど、Aが置いていった、この簪を見る度に、つけてくれた時の笑顔が戻ってきて恋心を捨てることは出来ない。
炭｢よし、禰豆子、行こう。｣
今日は任務で、蝶屋敷で月を見ることは出来ない。
けれど、早く鬼を倒して月を見よう。
俺は街へと足を進めた。
次の日。
俺は鬼を倒したあと、直ぐに蝶屋敷に戻った。
しのぶさんにAが来たのかの確認と、月を見に。
蝶屋敷についた頃には昼間になっていた。
縁側で軽く日向ぼっこをしていると、なにやら焦っているような匂いがしてきた。
それに、声も聞こえる。
急いで向かうと、女の子に囲まれている大の大人がいた。
女の子を抱えて…！誘拐か…！
炭｢なにしてるんだ！｣
思い切り頭突きをしようとすると、軽く交わされてしまった。
宇｢俺を誰だと思っている。
忍びの中でも名を馳せた宇髄天元様だぞ。｣
そんなの知るものか！
女の子を誘拐するなんて！
『女の子を攫うなんて趣味悪いですね。天元様。』
その時、とても会いたくて仕方がなかった人の匂いと声がした。
その人は俺の前にすっと、立つと宇髄さんを見上げた。
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作者名：エアー | 作成日時：2020年5月22日 14時
