隣の住人 2【斉藤壮馬】

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*





『……』





再び目を開けると、部屋は薄暗かった。





近くの窓に目を向けると外はもう真っ暗で、今が夜中なんだと理解した。








そして、手のあたたかさの正体。




それを知るためにゆっくりと反対側を向く。








『……！』








思わず声を失う。







私の手は、その人によって優しく包まれていて。





その人は近くの椅子に座ったまま、小さく寝息をたてている。








今までずっと顔を見たくて、見れなかった人。








声を聞きたくて、聞けなかった人。








話したくて、話せなかった人。








今までずっと、








＿＿＿＿会いたくて、会えなかった人。








夢の中で願ったことが、現実になった。





でも、いざとなってそうなると、人って何も出来なくなるんだって、自分の身をもって感じた。








しばらく動けなかった身体をゆっくりと起き上がらせる。








そして、寝ている彼の顔をじっと見つめて。








震える息を何とか落ち着かせる。








すーっと細く息を吸い込んで、








『そう、ま、さん…』








馬鹿みたいにかすれた声で、小さくそう言い放った後、





握られている手を、私も優しく握り返した。

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