隣の住人 2【斉藤壮馬】

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じゃあ、もしかして、私はもう佐々木くんの恋人じゃないの…？





矢「てっきり私、もう佐々木とは別れたと思って…」





地獄のような日々から、やっと解放されるの…？





矢「…A？」



『私、もう苦しまなくていいの…？』



矢「…そうだよ。もう、大丈夫」





雪の優しい言葉に、思わず涙が溢れ出る。





『よかったぁ…っ、』



矢「………っ、」





何故か雪も一緒に泣いていて。



と言うか、私よりも泣いている。





『何で雪が泣いてるのっ…』



矢「だって…っ、」



『あはは…顔、ぐちゃぐちゃっ…』





自然と笑みがこぼれる。





やっと、解放されたんだ。








矢「あいつに、仕返ししなくていいの？」





暫くしてお互い泣き止んだ時、雪がそう言った。





『…仕返しって？』



矢「そりゃあ、もう、一発殴るとかよ」



『えぇ、何で』



矢「はぁ？何でって当たり前でしょ？Aをあんな酷い目に遭わせておいて、挙げ句にはAが知らないうちに彼女を変えたのよ？」





と、早口で言う雪。





『うーん…別にいいかな』



矢「どうして」



『…そりゃあ、酷い目には沢山遭わされたし、今もこうなってるのは佐々木くんのせいだけど』



矢「だったら…！」








『…壮馬さんに何も無かったから。私はそれだけで十分』








佐々木くんと付き合ってた日々は、きっとトラウマになって、一生引きずっていくと思うけど。





私はそれ以前に、大切な人が無事だったならそれでいい。








壮馬さんが笑顔でいられたなら、もうそれだけでいいんだ。








矢「…っ、あんたって子は…」



『え、ちょっと、雪？』





ぼそっと何かをつぶやいた雪は、勢いよく病室を出て行ってしまった。

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