Lyra (ページ1)

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海斗と出会った時のことは

今でも鮮明に覚えてる

仕事終わりの行きつけのBAR

私のいつも座る席に先客がいて

長い睫毛と物憂げな目から

視線を逸らせなかった

『あの、これよかったら…』

普段だったらこんなナンパじみたこと

しないけど、綺麗な瞳から零れ落ちた雫に

思わずハンカチを差し出した。

｢え、あ、すみません｣

最初彼は不審そうに見つめてきたけど

ハンカチを見て自分自身の頬を伝う

涙に気づいたようで

｢ありがとうございます｣

そう言ってふにゃってした笑顔を見せた

苦しそうな表情を崩さない

彼を放っておけなくて1つ開けた隣の席に座った

綺麗な目だな、なんて考えてたら

不意に彼と目が合う

彼は哀しげな目で微笑んで

｢隣、座らないんすか？｣

断る理由もなかったから

注文したアイオープナーをスライドさせて

隣の席に移る

既に目を赤く腫らしている彼に

私はあえて何も聞かなかった

どれくらい時間が経ったか…

隣に座る彼が

｢あの、話、聞いて貰ってもいいですか｣

そう言ってぽつりぽつりと言葉を紡ぎ始めた

｢彼女、俺すごい好きだったんですよね。

今日記念日で、大学から付き合ってて。

そろそろ同棲かな、なんて言ってたんすけど、

他に好きな奴、いたみたいで｣

｢よりにもよって今日振られちゃって。

まじで、俺、今まで何してたんすかね｣

彼は切なく笑った