覚悟 ページ42
「それじゃあ、なりたい職業とか考えたことないの？」
「そりゃガキの頃はあったぜ？でも成長するにつれて、いつかは親の望んだ道を進まされるんだと悟ったよ。それからは段々と考えなくなった」
「……そっか」
慰めでも同情でもない良い返しができなくて口を結ぶ。こういうときこそ上手に彼を励ますことができたらいいのにな。
「ただ、そうだな。最近はまたちょっと違うかもな」
「？」
「俺ももうあの頃の非力なガキじゃないし、そろそろ覚悟決めないとな」
こちらを向いたアーサーと目が合う。
意図が読めず、首を傾げていると目を細めて口角を上げた。
「なんとかなるだろ」
「なにが？」
「なんでもねぇよバーカ」
長い人差し指で軽く額を弾かれてよろめいた。デ、デコピン…
「いてっ！なんだよもう〜」
「ふは、間抜けな顔」
彼のペースに振り回されてちょっと癪に障るけど、砕けた笑い声に絆されて笑顔になってしまうのだから私はつくづく彼に甘い。
「次、お前薬学だろ？早めに行って準備したほうがいいぜ」
すくりとベンチから立ち上がったアーサーに腕を引かれ、自分も立ち上がる。
「お前も覚悟決めとけよ」
「だからなんの？」
問いには答えず、背を向けヒラヒラと手を振っていってしまった。
「っはぁ〜…進路どうしよう。てか覚悟ってマジで何？」
自分の進路が決まらない悩みどころか、彼がどんな何を考えているのかという謎まで増えてしまった。
うんうんと悩み想像を膨らませかけたが、はっとして頭を横に振る。
「いけない、まずはフクロウだ」
余裕があるとはいえ、他の考え事にうつつを抜かしていると足元を救われる。
今は目の前のO.W.Lに向けて集中すべき時だろう、将来のことを考えるなら尚更だ。
「…準備しに行こ」
そろそろ授業終了の鐘がなる。
教科書に乗った緑の葉っぱを払って、魔法薬学の教室がある地下へと足を動かした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 49人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ベンザチャン(プロフ) - ショコラマドレーヌ…美味しそう(( 更新楽しみにしてます！！ (2022年10月31日 8時) (
レス) @page31 id: 05631b7c6e (このIDを非表示/違反報告)
シマ(プロフ) - ベンザチャンさん» いつも読んでくださりありがとうございます。アーサーはさり気なく相手の好みだけでなく自分の要素も取り入れた物をプレゼントしそうだなと思って書いてみました。応援ありがとうございます。 (2022年10月26日 2時) (レス) id: ececbacc38 (このIDを非表示/違反報告)
ベンザチャン(プロフ) - 全身アーサー色だなんて、、読んでる私が尊くて倒れちゃいそうです…(？)更新頑張ってください！！ (2022年10月22日 12時) (レス) @page24 id: 05631b7c6e (このIDを非表示/違反報告)
シマ(プロフ) - うきこさん» 読んでいただきありがとうございます！カークランド家とアーサーがどうしていくのか楽しみにお待ちくださいね、応援ありがとうございます！ (2022年10月17日 22時) (レス) id: ececbacc38 (このIDを非表示/違反報告)
うきこ - 続編も最高です！お家のこととかこれからどうなっていくのか気になる(≧∀≦)応援しています！！ (2022年10月17日 10時) (レス) @page19 id: 3d360ad6cd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：シマ | 作成日時：2022年10月7日 2時
