口止め料 ページ29
「わかったよ、君は大切な友達だしね。気は乗らないけど秘密は守るし応援するよ…」
「うん、ありがとう」
「そのかわりにお願いがあるんだけど、いいかい？」
いわゆる口止め料と言うやつかな。
アルを疑うわけではないし、断ったとしても周りに言いふらすような人ではないだろうが、バレたときのデメリットを考えれば引き受けたほうがいい。
「…いいよ〜私にできることなら」
彼の正義感強い人柄から、無茶な事は要望はしてこないと思いたいが…
「ありがとう！じゃあ俺も君の手作りスイーツがほしいんだぞ！」
元気な声が廊下に響きわたった。
いったい何を要求されるかと構えていれば、想像より軽くてシンプルなお願いに力が抜けた。
「そ、そんなんでいいの？」
「そんなんってなんだい！Aの手作りお菓子、食べてみたいんだ」
まんまるな瞳は星が飛びそうなくらい輝いていて、いつもの何割増しか透き通って見える。
材料のことを考えれば何人分かは余分に出来上がるだろうし、秘密を守ってくれる代金にしては安いものだ。
「いいよ、素人の手作りで良ければ」
「やったー！！楽しみにしてるよ！」
両手を握りブンブンと上下に振られてバランスを崩しそうになったが、あまりに嬉しそうなのでそのままにしておいた。
思えばクリスマスでも彼は食べ物に夢中になっていたし、人一倍食べることが好きなのだろう。
「それじゃあ約束だからね！それじゃ！」
大きく手を振って走っていったアルに手を振り返して一人になった廊下で頭を掻く。
「ますますフランシスの力を借りたくなったなぁ…」
一向に頷いてくれそうにない先輩の姿を思い出し、どうしようかと考えながら寮へと足を動かした。
談話室へ戻れば、部屋の奥から撃沈していたはずのフランシスがふらりと寄ってきた。
「A、おかえり」
「あ、戻ってたんだねフランシス」
一人用ソファーに腰掛けると、同じように向かいのソファーにフランシスがゆったりと座った。
お茶でもいれようかとテーブルにできた本の山を退けて二人分のカップとポットを用意する。
「…さっきはごめんね。お兄さん、余計なことまで口滑らせちゃった」
柄にもなくしおらしく眉毛を下げたフランシスに少し驚きながらも返事を返す。
「大丈夫だよ、あの二人はよく分かってなかったみたいだし」
「そ、そっかぁ…よかった」
ティーカップに注いだ紅褐色の液体から穏やかなベルガモットが香った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 49人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ベンザチャン(プロフ) - ショコラマドレーヌ…美味しそう(( 更新楽しみにしてます！！ (2022年10月31日 8時) (
レス) @page31 id: 05631b7c6e (このIDを非表示/違反報告)
シマ(プロフ) - ベンザチャンさん» いつも読んでくださりありがとうございます。アーサーはさり気なく相手の好みだけでなく自分の要素も取り入れた物をプレゼントしそうだなと思って書いてみました。応援ありがとうございます。 (2022年10月26日 2時) (レス) id: ececbacc38 (このIDを非表示/違反報告)
ベンザチャン(プロフ) - 全身アーサー色だなんて、、読んでる私が尊くて倒れちゃいそうです…(？)更新頑張ってください！！ (2022年10月22日 12時) (レス) @page24 id: 05631b7c6e (このIDを非表示/違反報告)
シマ(プロフ) - うきこさん» 読んでいただきありがとうございます！カークランド家とアーサーがどうしていくのか楽しみにお待ちくださいね、応援ありがとうございます！ (2022年10月17日 22時) (レス) id: ececbacc38 (このIDを非表示/違反報告)
うきこ - 続編も最高です！お家のこととかこれからどうなっていくのか気になる(≧∀≦)応援しています！！ (2022年10月17日 10時) (レス) @page19 id: 3d360ad6cd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：シマ | 作成日時：2022年10月7日 2時
