００９ ページ7
後日談というか、今回のオチ。
翌日、いつものように二人の弟、荒樹と成世に叩き起こされ、寝ぼけまなこをこすりながらも約束通り、日曜日をまるまる使っての勉強会のために、今日こそはその手料理を食べさせてもらえるんじゃないかとほのかな希望を抱きつつ、意気揚々として相川の家に向かおうと、今や私の持つ唯一のマシンとなってしまった通学用の自転車に跨り、門扉を開けて家から出たところで、手持ち無沙汰っぽく電柱の前で、何故か柔軟体操をしている少年に、出会うことになった。
私服だったが、制服姿のときに受ける印象とそんなに変わらない感じ＿＿直江津高校のスター、後輩の月崎志麻だった。
「おはよう、阿良々木先輩」
「……おはようございます、月崎さん」
「ん。ご丁寧な挨拶、恐縮や。阿良々木先輩はそういう礼儀礼節から、もう俺などとは人間の質がちゃうみたいやな。怪我はもう大丈夫なんか？」
「ああ……今はむしろ日光がキツいくらいだけど、それも心配していたほどではないかな。ダメージの回復と、とんとんって感じ。で、どうして月崎、私の家、知ってるわけ？」
「嫌やなあ、阿良々木先輩、わかっとる癖に。俺に見せ場を作ってくれようっちゅうんか？ やって俺は阿良々木先輩をストーキングしとったのや。自宅の住所くらいは調査済みやで」
「…………」
快活に笑って言われても困惑する。
「で、何か用？」
「うん、今朝相川先輩から電話があって、阿良々木先輩を迎えに行くように言われたんや。あ、鞄を持たせてくれ」
言うが早いか自転車の前カゴから、私のリュックサックをひょいと取り上げて、それを左手に抱える月崎。にこにことしたあどけない笑顔で、「その自転車のチェーンにも油を注しておいたで。他にも何ぞ用事があったら、遠慮せんと言って欲しい」と、私を見る。
友達を通り過ぎてパシリになっていた。
学校のスターを従え引き具すつもりは私には毛頭なかったけれど、しかし、あの病的なまでに嫉妬深い相川が、月崎にはこんな役割を任せているというところから、月崎と相川との修復された関係を、再結成された川崎コンビの間柄を読み取ろうとするのは、果たして私の穿ち過ぎだろうか。
きっと、穿ち過ぎだろうけれど。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 48人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
灰猫(プロフ) - りょくちゃさん» 毎回ありがとうございます！アレンジ部分はうまくできてるか毎回不安になるのでそう言ってもらえてうれしいです！早く続きをお見せできるよう頑張りますね！！ (2021年8月17日 18時) (
レス) id: 5303b97ef5 (このIDを非表示/違反報告)
りょくちゃ(プロフ) - 毎回失礼します！し、まモンキーも最高でした、、毎回ながら原作に沿ってるけど灰猫さんのアレンジが本当に好きです。これからも灰猫さんのペースで更新がんばってください！！ (2021年8月15日 20時) (レス) id: f217387575 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：灰猫 | 作成日時：2021年8月15日 19時
