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「あ、相川……」
腹に風穴が開いている所為でうまく喋ることができない＿＿声にならない、相川に向かって呼びかけるのも難しい。
どうしてここに？
そう訊きたいのに。
けれど訊くまでもなく、そんな答はわかりきっていた。歌詞さんの奴が呼んだに決まっている＿＿この問いに、それ以外に解答などあるものか。しかしどうやって？
歌詞さんが相川に対して、連絡手段なんて持っているわけがない＿＿相川真冬が、嫌っている伊東歌詞太郎に、携帯電話の番号を教えるわけがない。その機会さえなかったはずだ。
携帯電話？
ああ、そうか。
あの野郎＿＿個人情報保護の理念なんて小指の先ほども考慮せず、プライバシーを完全無視して、私の携帯電話を勝手にいじりやがったんだ。
この教室に入る前に、歌詞さんに預けたリュックサックに入れた、あの携帯電話……とりたててパスワードでロックをかけていたわけじゃない、いくら歌詞さんが機械に不得手でも、時間をかければ、アドレス帳や着信・発信履歴程度は、探ることはできるだろう。
携帯電話の使い方だけならば、あの母の日に、ある程度相川からレクチャーを受けているはずだし＿＿
だが、何故。
一体何のために、よりにもよってこんな場所に、よりにもよってこんなシチュエーションに、歌詞さんは、相川を、呼んだのだ＿＿
途端。
雨合羽が、後ろ向きに跳ねて、天井と壁をそれぞれ二、三回ずつ経由して、私からずっと離れた位置、教室の角から角へ、対角線の位置へと移動した。
どうして？
後一撃で、勝負は決まるのに。
願いは叶うのに。
ひょっとして、月崎志麻としての意識が、相川真冬が教室に現れたことによって、雨合羽に提供した無意識を、一時的に抑えつけたのか？ ということは、それが相川を呼んだ、歌詞さんの狙いだったのか？ けれど、そんなの、一時的な処置に過ぎないじゃないか。
レイニー・デヴィルは、人間のネガティヴな感情を糧とするのだから、それ自体が解消されないことには、何も変わらない。昔の海外映画よろしくの、愛の力で全てが解決するなんてことが、あるわけがないのだ。相川を呼ぶくらいなら、お前が来いよ、伊東歌詞太郎！
相川は、しかし、そんな雨合羽の行動など一切合財まるでちっとも興味がないとばかりに、じろりと、冷酷な眼で、ほとんど瀕死状態の私を、きつく睨んだ。それはまるで、獲物を狙う猛禽類の眼のようだった。
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灰猫(プロフ) - りょくちゃさん» 毎回ありがとうございます！アレンジ部分はうまくできてるか毎回不安になるのでそう言ってもらえてうれしいです！早く続きをお見せできるよう頑張りますね！！ (2021年8月17日 18時) (
レス) id: 5303b97ef5 (このIDを非表示/違反報告)
りょくちゃ(プロフ) - 毎回失礼します！し、まモンキーも最高でした、、毎回ながら原作に沿ってるけど灰猫さんのアレンジが本当に好きです。これからも灰猫さんのペースで更新がんばってください！！ (2021年8月15日 20時) (レス) id: f217387575 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：灰猫 | 作成日時：2021年8月15日 19時
