【イナアレ】島柄長 (ページ30)

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第15話歪み 1 ページ30

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お互いの飲み物が空になり、いい具合に体も休まって、そろそろ席を立とうとしたときだった、

「あ、ゴメン～。ウチ、ちょっとトイレ行ってくるな～。」

なえは両手を合わせ、千鳥に軽く頭を下げる。千鳥は行ってらっしゃい、と頷くと、なえの背中を見送った。

(姫様がお手洗いに行ってる間に、食器片付けちゃおう)

千鳥はそう思い立ち、2人分の食器をまとめてフードコートの食器返却棚に返しに行った。そして、フードコートから少し離れたトイレの前のベンチでなえを待つことにした。

「ねえ、お姉さん1人？」

なえを待ち始めて、少しばかり時間が過ぎる。ぼうっと千鳥がなえの帰りを待っていると、ふと声をかけられた。千鳥が声のした方を向くと、背の高い男性二人が人のいい笑顔をこちらに向けていた。

「良かったら俺らと遊ばない？」
「この近くの面白い場所紹介するよ」

ギクリと心臓が嫌な音を立てるのを千鳥は聞いた。これが噂の『ナンパ』というものだろうか。北海道では遭遇したことがないものだから、本当に実在したのかと妙な感慨にふけってしまう。しかし、そんな場合ではない。

「すみません。友人を待っているので……。」
「へぇ、その友達って女の子？男の子？」
「えっと……」

千鳥が返答に困っていると、「ちょっと～！」と大きな声が聞こえてきた。この声はなえのものだ。
トイレから戻ったなえは千鳥と男たちの間に割り込むと、キッと男たちを睨みつけた。

「ウチの大事な友達に何するん！？」
「へぇ～、これがお友達？お友達も可愛いね」
「折角だしさ、2人一緒に遊ぼうよ」

しかし、なえの睨みなど男たちは気にもとめない。それどころか笑顔を下卑たものに変え、千鳥の腕を掴んだ。

「あっ…」
「ちょっと、離すっぺ！」
「大丈夫大丈夫、ちょっと案内するだけだからさ」

そのまま男はぐいと千鳥の腕を引く。思わずぐらりと千鳥が体勢を崩したときだった。転んでしまう、と目をぎゅっと瞑った千鳥だったが、彼女が床と激突することはなかった。

「──大丈夫かい？」

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