第12話 内緒の特訓 1 ページ24
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全国大会のため、東京に行く日が近づいている。白恋の練習はいつも以上に気合が入っていた。
「よし、今日はここまでにしよう。みんな、ストレッチを忘れないようにね。」
キャプテンの士郎が額の汗をぬぐいながらメンバーに指示を出す。それにはーいと返事をすると、白恋の選手たちは「あ〜疲れたべ」「帰りコンビニ寄ってこー！」などと話しながらぞろぞろ部室へと戻っていった。
「千鳥」
士郎はそっと、座り込んで息を整えている少女に話しかける。千鳥は顔を上げると、笑顔を作って「なあに？」と答えた。
「ボクらも帰ろう。」
士郎はそう言って千鳥に手を差し伸べたが、千鳥は士郎から視線を逸らし、その手を取らなかった。
「あー…今日からは士郎くんとアツヤくん、2人で帰ってもらえる？わたしも、今日からはわたしの家に帰るから。」
「……どうして？」
「お、おばさんが帰ってくるの。久しぶりに……。だから……。」
「本当に？そんな話、ボクは母さんから聞いてないけど。」
「本当なの！だから、ね？グラウンドの片付けもやっておくから、士郎くんたちは先に帰ってて！」
千鳥はそう言うと立ち上がり、士郎の背中を押してぐんぐんと部室の方へ歩かせた。士郎はグラウンドの片付けならボクも一緒にと言うも、千鳥はいいから！と聞き入れない。
士郎ははぁ、と一つため息をつくと、「わかったよ」と口にした。
「今日からはボクら2人で帰る。…その代わり、千鳥も出来るだけ早く、気を付けて帰るんだよ？」
「うん！もちろんだよ！」
千鳥はにっこり笑顔で頷いて返してみせる。けれど、その視界から士郎の姿が消えたと同時に、彼女の視線はぐっとするどくなった。
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作者名：いわき | 作成日時：2019年10月18日 0時
