第65話 何もできないな 2 ページ31
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だめだ、だめだ。疲れてるんだ。
ろくなことを考えられなかったけど、今日はもうやめにしよう。
千鳥はゆっくり立ち上がりテントに戻ろうとする。そのとき「まだ起きていたのね」という声が聞こえた。顔を上げると瞳子がいる。
瞳子こそ、こんな深夜まで何をしていたのだろうか。
「瞳子監督。イプシロン戦で、どうして士郎くんにあんな指示を出したんですか？士郎くんの二重人格の話、監督は知っているはずです。」
千鳥は瞳子にそう詰め寄る。一瞬だけ瞳子はたじろぐような、申し訳なさそうな目をしたが、すぐにいつもの冷静な目に戻った。
「わたしの使命は地上最強のメンバーをつくり、エイリア学園に勝利すること。それだけよ。」
「…そのためなら、士郎くんがどうなってもいいって言うんですか？」
千鳥は思わずキツイ口調になってしまう。しまった、とも思ったけど動き出した口は止められなかった。
「…わかりました。監督がそのつもりなら、わたしにも考えがあります。」
「考え？」
「監督が勝つために手段を選ばないなら、わたしも、わたしの目的のために手段を選びません。…士郎くんを守るためなら、そして、彼が成長するためなら。雷門がどうなろうがエイリアがどうなろうが──地球がどうなろうが、知ったことではありません。」
千鳥は最後に頭を下げて「失礼します。おやすみなさい。」と言ってテントに戻った。
なんだか、とんでもないことを言ってしまった気がする。瞳子は自分の言葉に何を思うのだろうか。
テントの外から「それでも、わたしは…」という瞳子の小さな呟きが聞こえた、気がした。
(監督だって事情があったろうに。さっきの言葉はあまりにきつかったんじゃないのかな。わたしは、わたしは……。)
色々な考えや感情がごった煮になった頭のまま無理やり目を閉じる。
今夜は、悪い夢でも見そうだ。
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作者名：いわき | 作成日時：2019年7月4日 7時
