第64話 賑やか女子トーク 2 ページ29
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「吹雪くん、千鳥さんに何かあると血相変えて飛んでくるよね。」
「千鳥さんも普段口を開けば吹雪先輩、吹雪先輩ばっかりよね。」
彼女たちが茶化すように言う。リカは「はは〜ん、たしかにこれはラブの波動感じるわ〜」と手を顎にあてた。
四方からずいずい迫られる千鳥は、どんどん息苦しくなっていく。本当に違うのに、と千鳥がたじたじになっていると、「へえ〜、なんかあたしはそう言うのわかんないな〜。」と呑気な塔子の声がした。
「塔子は本当にガキンチョやなぁ。」
リカはそんな塔子に呆れたように溜息をつく。助かった、と千鳥はほっと息を吐いた。
「ていうか、あたし流石にそろそろ寝たいんだけど。」
塔子はふわぁと欠伸をする。木野も「そうね。夜も遅いし寝ましょか。」と賛成した。リカだけが不満げだったけれど、ほかの5人が寝る体制に入ったのを見てしぶしぶ目を閉じだようだ。
テントの中が静かになって10分くらいした頃だろうか。もうテントの中にはすうすうというみんなの寝息と、寝返りの衣摺れの音しか聞こえない。
(…やっと1人になれた。)
千鳥はそろそろと寝袋を出る。
アツヤのことが気がかりで、心の中を整理しないと寝れる気もしないのだ。
一応誰に見られても問題ないように髪の毛だけ整える。服装はジャージのままだが。
そっとテントから出ようとした時、木野の「千鳥さん…？」という微かな声に肩を揺らした。起こしてしまっただろうか、恐る恐る振り返る千鳥に木野は眠たそうなとろんとした目を向ける。
「眠れないの…？」
「は、はい。だからちょっと外の風に当たってこようと思って。」
「そっか…気をつけてね…。」
それだけ言うとまた木野はすうすうと寝息を立て始めた。
木野はなんだか、母に似ている。
(…素敵な先輩だなぁ。)
そう思いながら千鳥はテントを出た。ぬるい風が頬を撫でる。彼女はテントの隣にそっとしゃがみこんだ。
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作者名：いわき | 作成日時：2019年7月4日 7時
