第58話 必死の特訓 2 ページ15
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2人は時間を忘れ、特訓を続けていた。
それからどのくらい時間が経っただろう。ふとその部屋の扉が開いて、円堂と木野が顔を見せた。
「おーい、吹雪、千鳥……」
大きな音を立てて特訓をする吹雪の気迫に呆気にとられたのか、ドアの前で円堂たちは一瞬立ち尽くした。
千鳥が「先輩？」と声をかけると、円堂はハッとして、たじろぎながらも「…昼メシ。リカの友達が差し入れ持ってきてくれたぞ。」と伝えた。
千鳥は「少し後で、2人で行きます。」と笑う。2人は「あ、ああ」と曖昧な返事をし部屋から出て行った。
「アツヤくん！お昼ご飯だって。」
2人が出て行くと、千鳥は特訓に熱中している吹雪にそう声をかける。しかし、吹雪は「まだ、まだだ…。」とその声を無視してトレーニングマシンを睨みつけた。
「アツヤくん！」
「うるせェ！」
「オーバーワークだよ！効率のいいパワーアップのために休息と栄養補給は大事！」
「……クソッ。」
何度も千鳥が吹雪に呼びかけ、ようやく彼は特訓をやめてくれた。俯きがちにコートを出て、千鳥の側に歩いていく。
「アツヤくん…。」
「オレは次の試合、絶対にあのデザームとかいうやつを倒してやるんだ。」
「…そっか、そうだね。一緒に頑張ろうね。雷門のみんなも、一緒に。」
「……。」
吹雪は返事をくれない。千鳥がもう一度口を開いたとき、「ご飯、行こうか。」と声をかけられた。吹雪はもう士郎に戻っていた。
やはり不安だ。開きかけた心が、また閉じて行ってる。また、吹雪がひとりぼっちになってしまっている。
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「…なんか、珍しいわね。」
「吹雪か？確かにいつもより気合入ってたけど、試合のときあんな感じだろ？」
「ううん、吹雪くんもだけど、千鳥さん…。」
木野と円堂は2人を呼びに行った帰り、廊下でぽつぽつと話をしていた。
「…吹雪くん、ちょっとオーバーワーク気味に見えたわ。普段の千鳥さんなら特訓をやめるよう言っててもおかしくないと思ったんだけど…。」
「うーん。吹雪の気合いに押し負けたんじゃないか？」
「そうなのかしら…。」
木野は不安げに2人がいる扉を振り返る。しかしそれ以上考えることなく、2人はみんなのいる場所へと戻っていったのだった。
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作者名：いわき | 作成日時：2019年7月4日 7時
