第199話 旅立ち 2 ページ37
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「…ねえ千鳥。ずっと言いたかったことがあるんだ。」
「士郎くん？」
吹雪は千鳥から視線を外し、まっすぐ正面を向いた。千鳥はそんな吹雪の横顔をじっと眺める。
「雷門に入るまで、ボクたちはきっとお互いに依存してた。お互いがいないと歩けなかった。」
「…そうだね、そうだったね。」
「でも、今は違う。ボクたちは1人でも歩いていける。」
吹雪は正面を向いたままそう続けた。千鳥も吹雪から視線を外し、まっすぐ前を向く。
雷門イレブンと出会ったことで、彼女たちは自立し、自分たちの足で歩いていけるようになった。それは一抹の寂しさを纏うが、暗闇でお互いにしがみついているより、よっぽど呼吸がしやすかった。
「…でも、ボクは。」
吹雪は自分を奮い立たせるように膝の上で拳を握った。その耳は少しだけ赤い。
「ボクはそれでも、千鳥の隣にいたい。」
「士郎くん…。」
「ボクたちは自分1人でも生きていける。それでも、キミのそばにいたいんだ。」
吹雪は千鳥に視線を向け、まっすぐ千鳥を見据えた。その凛とした視線に射抜かれた千鳥は少し鼓動が早くなる。
けれど、その気持ちは千鳥も同じだった。千鳥はにっこり笑って、
「勿論だよ。これからもずっと一緒だよ、士郎くん。」
と応えた。そうしてお互い笑いあい、再び正面を向いて座りなおす。
今まで暗闇の中で、お互いが抱き合って必死に立っていた。今は光の中で、2人隣に立ち、同じ方向に歩いていく。
千鳥と吹雪の頬には柔らかな笑みが浮かんでいた。
この言葉には、この関係性には、色恋の感情は関わってはこない。けれど恋慕の情を抜きにして、この2人には特別な絆があるのだ。
(…まあいつかは、そういう意味でも隣にいられたらと思うけどね。)
柔らかに微笑む千鳥に、吹雪は一瞬目を細める。それは獲物を狙う狼のように鋭い視線だった。
その視線に気付いた千鳥は「士郎くん？」と首をかしげるも、吹雪はすぐにぱっといつもの笑顔になって、「なんでもないよ」と返した。
そこから2時間弱の時間をかけて、飛行機は彼らを故郷へと運んでいったのだった。
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いわき(プロフ) - 檸檬けーき。さん» 檸檬けーき。さん、コメントありがとうございます！とても嬉しいです！この小説はもう完結していますが、同じ主人公が出てくるアレス版の新作を書き始めましたので、良ければそちらもご覧ください(＊^^＊) (2019年10月18日 10時) (
レス) id: b59bbba1ca (このIDを非表示/違反報告)
檸檬けーき。(プロフ) - 面白いです！更新楽しみにしてます (2019年10月18日 5時) (レス) id: 31d6ef12c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いわき | 作成日時：2019年10月8日 0時
