第193話 先輩の相談事 2 ページ22
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「その子は、別の人が好きなんだ。しかも心の底からぞっこんなんだよ。どうしたらいいかな？」
一之瀬の話を聞いて、千鳥の頬の赤みはさあっと引いていった。重い。重すぎる。はじめての恋愛相談にしては与えられた問いがあまりに難題だった。
「えっ、えっと、その。」
「正解を言おうとしなくていいからさ、千鳥の考えを教えてほしいな。」
「わたしの考え…。」
千鳥は数秒考え込む。自分にもし好きな人がいて、その人が別の人を好きだったら。
「……わたしは、わたしの好きな人が幸せになれる道を選びます。」
「というと？」
「もし好きな人が、わたしじゃない人と結ばれるのが幸せなら、わたしは好きな人の恋路を精一杯応援します。」
「…そう、か。」
一之瀬は千鳥の話を聞いて少し俯いた。一之瀬の顔の影がより濃くなる。さっきの笑顔が曇って見えたのは、彼がこのことで悩んでいたからなのだろう。
千鳥は「でも、」と言葉を続けた。一之瀬は顔を上げる。
「わたしは、わたしの好きな人のそばにいたいので、わたしが好きな人を世界で一番幸せにできるように努力します。」
千鳥は少し笑ってそう言った。
その言葉を聞いた一之瀬はぽかんと口を開ける。そしてしばらくするとあははと声を上げて笑った。
「そっか。うん、千鳥らしい。」
その笑顔を見て、千鳥は頬を緩ませる。良かった、彼の顔の雲が取れたように見える。
「君に聞いて正解だった。勇気が出てきたよ。」
一之瀬は目を閉じて笑う。千鳥はただ自分の考えを伝えただけだが、それで一之瀬が喜んでくれたのなら、嬉しいことだった。
「…それにしても、少し意外だな」
「何がですか？」
一之瀬は一度カップに口をつけると、また新しく話を始めた。
「君が好きな人に対して、側にいたいとか、そういう言葉を使うの。君は恋愛経験は少なそうと思ってたけど、好きな人がいたことがあるんだね。」
千鳥は一之瀬の言葉に苦笑いだ。『恋愛経験少なそう』だなんて、人によっては大分失礼な言葉になりかねないが、千鳥の場合事実なので返す言葉もなかった。
「…そうですね。」
けれど、千鳥だってもう中学生だ。好きな人がいたことが無いわけでは無い。好きという気持ちがどういうことか知っている。
千鳥はそっと自分の首に巻かれたマフラーを握りしめた。
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いわき(プロフ) - 檸檬けーき。さん» 檸檬けーき。さん、コメントありがとうございます！とても嬉しいです！この小説はもう完結していますが、同じ主人公が出てくるアレス版の新作を書き始めましたので、良ければそちらもご覧ください(＊^^＊) (2019年10月18日 10時) (
レス) id: b59bbba1ca (このIDを非表示/違反報告)
檸檬けーき。(プロフ) - 面白いです！更新楽しみにしてます (2019年10月18日 5時) (レス) id: 31d6ef12c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いわき | 作成日時：2019年10月8日 0時
